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家族信託契約後に贈与を実行できますか?

3月 2, 2015

後見人による預貯金の財産管理で注意すべきこと【法定後見】例えば、委託者兼受益者となる父親が、信託契約に基づき財産管理を受託者(長男)に任せた後、その父親が孫に信託財産となった金銭を生前贈与したい場合、直接受託者から孫に贈与していいのかというお問合せは多いです。

受託者が受益者の生活・介護などに関する費用を直接債権者に支払う場合、受益者にとって債務の弁済というメリットがありますので問題はありません。

その一方で、受託者が委託者兼受益者たる親から預かっている信託財産を、受託者が孫などに直接贈与すること(受託者が贈与の代行をすること)は、できないと考えるべきです。

受託者は、受益者のために財産管理をする義務を負いますので(信託法第30条)、もし受託者が預かっている信託金銭を受益者以外の者に給付することは、受益者の財産を減少させる(毀損する)ことになり、受託者の「忠実義務違反」(信託法第30条)として受託者の責任を問われるリスクがあるからです。

結論しては、父親が元気であれば、受託者が預かっている信託金銭から贈与資金を一旦父親名義の銀行口座に戻し、父親が自らの判断と手続きにおいて通常の贈与手続きを実行すべきです。

つまり、もし今後父親の意思能力の著しい低下や喪失がみられた場合は、父親に贈与能力(贈与契約を締結する能力)がなくなりますので、このような通常の贈与は、もやはできなくなります。

なお、信託の仕組みの中で、委託者兼受益者の健康状態・判断応力の状態を問わずに生前贈与を実行するには、「受益者変更権・受益者指定権」を駆使した「みなし贈与」というやり方が理論上ありますが、この手法を駆使するには、事前に税理士さんや所轄税務署としっかりとしたお打合せ・調整が必要ですのでご注意ください。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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