商業登記・企業法務

新会社法施行による改正点の要点

11月 30, 2006

設立時現物出資の改正
検査役の調査を省略できる場合
1)現物出資の価格の総額が『資本金の5分の1』以上の財産であっても、500万を超えない場合は、検査役の調査を不要とする。
2)『取引所の相場のある有価証券』から『市場価格のある有価証券』に有価証券の範囲を拡大した。
3)現物出資に関する事項が相当である事につき、弁護士・弁護士法人・公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人の証明を受けた場合
(目的財産が不動産の場合はその証明及び不動産鑑定士の評価を受けた場合)

発起人の責任の見直し
1)発起設立(会社を設立する際に発行する株式の全部を発起人が引き受け、発起人以外から株主を募集しない設立方法)の場合に、設立時の取締役及び発起人(現物出資または財産の譲渡人を除く)が財産価格の調査について過失の無い事を証明した場合には、填補責任を負わないものとする。
2)募集設立(設立の際に発行する株式の一部を発起人が引き受け、残りを募集して発起人以外の人に引き受けてもらう設立方法)の場合における株式会社の発起人及び設立時の取締役は、無過失の填補責任を負う。

類似商号制度の廃止
以前は、同一市区町村内に同業種で類似した商号の会社を設立することができませんでしたが、本店住所が違えば(極端な話、部屋番号さえ違えば)、同一商号・同業種であっても登記が可能になりました。
ただし、商業登記手続の段階での規制が働かないので、その反射的効果として、商標権の侵害や不正競争防止法への抵触といった観点からの紛争が今後益々
増えていくだろうことが予想されます。
結局、会社設立や商号変更の際には、類似商号及び類似商標の使用状況調査は従来以上に欠かすことができないと言えます。

目的調査の簡略化
改正前は、管轄法務局での目的相談も調査に時間がかかりました。
会社の仕事・営業の内容を目的といいますが、具体性・明確性な言い回でないと通らず、また、法務局の担当者によっても判断が異なることがあり大変でした。
しかし、このような煩雑な目的調査作業がなくなるのも、上記の類似商号の廃止があるからです。今後、目的は簡単な日本語の意味さえ分る程度の文言で申請が通るようになるようです。

支店所在地の登記の簡素化
支店所在地において登記すべき事項は
1)会社の商号
2)本店の所在地
3)当該支店の所在地
に限定されました。
商業登記のコンピュータ化が進み、本店の商業登記簿にアクセスすれば容易に必要な情報が検索できるので、支店の登記は、本店の情報にアクセスする事を可能にした情報と位置づけられ3つの事項に限っているものと思われます。

<改正ポイント1>
有限会社制度の廃止(今や設立できない有限会社は今後プレミアがつくかも!?)
5月1日以降は、有限会社であっても「株主総会」を開催することになります。
既存の有限会社は定款変更決議により株式会社へ簡単に移行可(純資産制限ナシ!)。
1.株式会社へ移行するメリット:
(a)大手企業との取引で有利
(b)社会的信用向上
2.株式会社へ移行するデメリット:
(a)役員の任期制の発生
(b)決算公告義務の発生
(c)官公庁への各種届出、看板・名刺・封筒等の作り直し、銀行口座の切替等の負担

<改正ポイント2>
最低資本金規制の撤廃(恒常的に資本金が1円の会社が設立可能)
会社設立も増資も手続が簡素化(銀行の払込金保管証明書は不要⇒預金通帳でOK)。
資本金規制の撤廃でも、「確認会社」は定款変更して解散事由の抹消登記が必要。
後述する「g.発行株式の多様化」を利用して、 他人資本が入った会社であっても設立当初から経営の安定化を図ることがでます。
旧商法時の定款ひな型は、新規設立に際して全く使えなくなりますので要注意。

<改正ポイント3>
類似商号制度の廃止(事前規制から事後解決型社会へ)
本店住所が違えば同一商号・同業種であっても登記が可能。
しかし登記はできても、不正競争防止法の適用や商標権侵害の問題から類似商号の使用状況調査は依然必要

<改正ポイント4>
株式会社でも取締役は1名でOK!(従来の有限会社型機関設計が可能に)
株式譲渡制限会社においては、取締役会や監査役の設置が任意で、取締役が1名のみでもOK。
数合わせの名目上の役員は、この際退任して頂き整理するという選択肢も。

<改正ポイント5>
取締役・監査役の任期を最長10年まで伸長可能
株式譲渡制限会社においては、定款変更により原則2年の任期を最大10年まで伸長可能ですので、
これにより役員変更登記手続の手間と費用を節約可能。
選任と同様取締役解任決議も原則普通決議でOK(監査役の解任決議は従来どおり特別決議が必要)。
但し、任期途中の会社都合による解任は、残存任期に対する損害賠償を請求される恐れもあるので注意が必要。

<改正ポイント6>
会社に対する貸付債権の現物出資の全面解禁
従来は現物出資には原則500万円の制限があり、それを超える場合は税理士等の財産評価に関する証明書等が必要でしたが、弁済期が到来している債権を債権額以下で出資する場合であれば、金額の制限無く自由に可能!
⇒社長からの借入金を資本金に簡単に振り替えることができ、財務内容の改善をよりスムーズに図れる

<改正ポイント7>
発行株式の多様化 (定款自治のもと種類株式の発行は何でもあり!?)
株式譲渡制限会社においては、議決権のない「議決権制限株式」を株数制限無く発行可能に
⇒オーナー所有の株式だけに議決権を与えたり、オーナー所有の株式の議決権を多くすることで、会社の意思決定機能を強固にすることが可能。
定款で「相続人等に対する株式売渡請求権」を設けることにより、相続等一般承継でも会社にとって好ましくない者が株主になることや相続人間での紛争を予防。
株主全員の同意があれば既に発行済みの普通株式に事後的に「取得条項」等を付けることができ、これにより株主比率に問題のある会社の経営を安定させることが可能に。
<改正ポイント8>

取締役会を設置しない会社の株主総会手続の簡素化 株式譲渡制限会社においては、取締役会を設置しない旨を定款に規定すれば、下記のような手続きの簡素化が可能。
ア)株主総会の招集通知の発信は、開催日の1週間前より短く設定OK
イ)株主総会の招集は、郵便やメールなどではなく電話や口頭でもOK!
ウ)株主総会の招集通知に会議の目的事項の記載不要!
エ)定時株主総会の招集通知に計算書類(貸借対照表・損益計算書等)記載不要!

<改正ポイント9>
作成すべき計算書類の内容の変更 会社法施行日以後に決算期が到来する会社から、会社法に基づいた計算の取扱が求められ、定時総会での報告・承認内容は、(1)貸借対照表 (2)損益計算書 (3)株主資本等 変動計算書 (4)個別注記表 と変更になります。
これに伴い「利益処分案」としての株主総会決議は不要に。

<改正ポイント10>
「合同会社」という新たな会社類型の創設 (利用価値については未知数)
株式会社と同様出資額内でしか責任を負わない(有限責任)が、出資比率にとらわれない議決権の設定など、内部組織については自由な設計が可能
(類似した業態であるLLPには法人格がないので、法人税課税がないという違いがあります)。
この他にも、まだまだ細かな論点がたくさんありますが、代表的なものを列挙してみました。
ご不明な点等につきましては、お気軽にお問い合わせ下さい。
尚、「有限会社を経営されている方」、「株式会社を経営されている方」、「これから起業される方」とケース別のより詳しい資料もご用意しておりますので、ご希望であればその旨ご連絡下さい。
また、個別案件のご相談にももちろん無料でご説明・ご相談に伺いますのでお気軽にご連絡下さい。
よろしくお願い申し上げます。

★本年4月1日税制改正の「同族会社の役員報酬の一部損金不算入」対策
1)株主構成を変える! :10%超の株式を非同族の株主に持ってもらう。
他人資本の導入については上記「g」の予防策(議決権制限株式以外)の策定が理想的です。
2)役員構成を変える! :名目を除く常勤役員の過半数が同族の場合に、今回の規制の対象となるので、常勤役員の半数以上を同族以外にする。 ?社長報酬を一定以内に抑える! :今回の改正の適用除外の規定を利用し、社長報酬と法人所得の合計額の直前3年平均額が、
ア)800万円以下
イ)800万円超3,000万円以下の場合で社長報酬額が50%以下 でOK。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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