遺産相続手続・遺産整理・遺言執行

遺産分割協議書作成の手引き

12月 20, 2015

被相続人が遺言書で相続財産をどのように承継させるかを決めていなかったり、遺言書に記載の無い相続財産が存在する場合、当該遺産のすべては、相続人が概念的に法定相続分で相続したことになります。
従いまして、この法定相続分とは異なる遺産の分割方法を希望する場合、誰がどの財産をどのような割合で相続するかを相続人全員で協議する必要があります。

また、遺言書に相続分の指定の記載があったとしても、相続人全員が納得の上であれば、遺言書の内容とは異なる遺産の分割をすることは問題ありません(被相続人が遺言書で分割を禁止した場合を除きます)。
遺言執行者、相続人以外の受遺者がいる場合は、その者の同意が必要です。

この際に、後の紛争予防のためにも、また遺産整理手続上の必要性からも、相続人全員で合意された内容を書面にした「遺産分割協議書」を作成する必要があります。
被相続人のすべての遺産が分割の対象になりますが、すでに生前贈与された財産や遺贈財産(特別受益)なども考慮に入れて協議を行う必要があります。

負の遺産(債務)について、遺言書に記載されていないことが多いので、そういった負の遺産(債務)についても、誰が中心となって承継するのか遺産分割協議をすることが望ましいでしょう。
ただし、その合意が有効となるには、債権者の承諾が必要になります。

また、遺産の対象である物品・権利義務の種類・性質・評価額、各相続人の生活状況・年齢・職業・被相続人との関係性その他一切の事情を総合的に考慮して、相続人全員が公平感をもって納得できるように話をまとめることが求められます。

 

◆遺産分割の方法◆

1.現物分割
遺産の現物(不動産や現金等)をそのまま分割する方法。
被相続人から直接権利を承継するものなので、譲渡所得としての課税問題は生じません。

2.代償分割
特定の相続人が現物(不動産等)を取得し、その代わりに他の相続人に対して自己所有の財産又は相続により取得した財産から金銭などを交付する方法。
代償分割によって財産を取得した相続人が、債務の履行として金銭を交付した場合には、譲渡所得としての課税問題は生じません。
しかし、その債務の履行として不動産等を譲渡した場合には、その移転に伴って債務が消滅するので、有償譲渡が行われたことになります。従いまして、所有権が移転したときに、その財産の時価相当額の収入があったとして、譲渡所得の課税が生じます。

3.換価分割
遺産を換金処分してその売却代金の分配をもって分割する方法。
この場合、その換価代金の分配を受けた相続人は、相続により取得した相続財産にかかる権利を譲渡したものと解されるので、その相続により取得した権利(配分)に応じて譲渡所得の課税が生じます。

 

◆遺産分割協議に際してのご注意点◆

(ア)分割協議の対象となる財産はどれか(対象財産のリストアップ)
折角話がまとまったのに、あとで新しい遺産が見付かり、協議のやり直しやトラブルになっては大変です。準備段階で時間をかけて、遺産をすべて洗い出しましょう。

(イ)個々の遺産の評価額をいくらにするか
不動産や有価証券・非上場企業の株・骨董品・家財道具一式などの評価をどうするかは、最重要な論点です。不動産であれば、時価相当額で評価するのか、相続税評価額で評価するのか、家賃収入などの収益性から評価するのか等の問題になりますし、上場会社の株式であれば、いつの時点の株価をもって評価額にするかという問題も生じます。
また、換価性が低いがある程度の価値のある物は、評価の算定が難しく、相続人間で評価の開きが出る遺産もあるかもしれません。

(ウ)考慮すべき生前贈与や寄与分はあるか
生前に贈与を受けたり、他の相続人より多くの学費や生活費を出してもらっていた相続人がいれば、その特別受益分を相続財産の価格に加えて分割協議をするということも必要な場合があるでしょう。
あるいは、生前に被相続人に対し、金銭等の給付をしたことがあったり、療養看護につき他の相続人より多くの負担をした相続人がいた場合は、その寄与分を考慮の上、分割協議をするということも必要な場合があるでしょう。
特に、同居をして看護・介護を担った相続人とそうでない相続人との間では、寄与分・特別受益についての評価・認識が分かれるケースも多く見られますので、専門家による客観的・冷静な評価が求められます。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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