商業登記・企業法務

下請法について ≪下請けいじめは違法行為≫

5月 14, 2008

下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」と言い、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された特別 の法律です。
業務の一部または全部を委託する際に、委託者と受託者のとの間で締結する契約を業務委託契約といいますが、この契約の締結にあたっては、まずはこの契約に下請法の適用があるかどうかを確認する必要があります。
下請法が適用される取引かどうかについては、「親事業者と下請業者の資本金」「「委託する業務内容」の2つによって規定されています。
また、親子会社の関係にある2つの企業間の取引きでも下請法が適用されます(ただし、親会社が子会社の議決権の50%超を所有するなど、実質的に同一会社内での取引とみられる場合は、適用されません)。
この法律で規制される「下請け取引に該当するかどうか」は、早見表(作成中)をご覧下さい。

下請法では、以下のことが定められています。
(1)親事業者の義務
(2)親事業者の禁止行為

以下に、具体的にご説明します。

★親事業者の義務★

1 書面の交付義務(第3条)
親事業者は、発注に際して下記の具体的記載事項をすべて記載している書面(3条書面)を直ちに下請事業者に交付する義務があります。
【3条書面に記載すべき具体的事項】
(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
(2) 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう、明確に記載する。)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)
(5) 下請事業者の給付を受領する場所
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日
(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが、算定方法による記載も可)
(8) 下請代金の支払期日
(9) 手形を交付する場合は、その手形の金額(支払比率でも可)と手形の満期
(10) 一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払可能額、親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
(11) 原材料等を有償支給する場合は、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日、決済方法

2 支払期日を定める義務(第2条の2)
親事業者は、下請事業者との合意の下に、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査するかどうかを問わず、下請代金の支払期日を物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内でできる限り短い期間内で定める義務があります。

3 書類の作成・保存義務(第5条)
親事業者は、下請事業者に対し製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした場合は給付の内容、下請代金の額等について記載した書類(5条書類)を作成し2年間保存する義務があります。

【5条書類に記載すべき具体的事項】
(1) 下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
(2) 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は役務の提供の内容)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をする期日・期間)
(5) 下請事業者から受領した給付の内容及びその給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者から役務が提供された日・期間)
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をした場合は、その検査を完了した日、検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い
(7) 下請事業者の給付の内容について、変更又はやり直しをさせた場合は、その内容及び理由
(8) 下請代金の額(算定方法による記載も可)
(9) 下請代金の支払期日
(10) 下請代金の額に変更があった場合は、増減額及びその理由
(11) 支払った下請代金の額、支払った日及び支払手段
(12) 下請代金の支払につき手形を交付した場合は、手形の金額、手形を交付した日及び手形の満期
(13) 一括決済方式で支払うこととした場合は、金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
(14) 原材料等を有償支給した場合は、その品名、数量、対価、引渡しの日、決済をした日及び決済方法
(15) 下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価を控除した場合は、その後の下請代金の残額
(16) 遅延利息を支払った場合は、遅延利息の額及び遅延利息を支払った日

4 遅延利息の支払義務(第4条の2)親事業者は、下請代金をその支払期日までに支払わなかったときは、下請事業者に対し、物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について、その日数に応じ当該未払金額に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払う義務があります。

★親事業者の禁止行為★
1 買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
親事業者が発注に際して下請代金の額を決定するときに、発注した内容と同種又は類似の給付の内容(又は役務の提供)に対して通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めることは「買いたたき」として下請法違反になります。
2 受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)
親事業者が下請事業者に対して委託した給付の目的物について、下請事業者が納入してきた場合、親事業者は下請事業者に責任がないのに受領を拒むと下請法違反となります。
3 返品の禁止(第4条第1項第4号)
親事業者は下請事業者から納入された物品等を受領した後に、その物品等に瑕疵があるなど明らかに下請事業者に責任がある場合において、受領後速やかに不良品を返品するのは問題ありませんが、それ以外の場合に受領後に返品すると下請法違反となります。
4 下請代金の減額(第4条第1項第3号)
親事業者は発注時に決定した下請代金を「下請事業者の責に帰すべき理由」がないにもかかわらず発注後に減額すると下請法違反となります。
5 下請代金の支払遅延の禁止(第4条第1項第2号)
親事業者は物品等を受領した日(役務提供委託の場合は役務が提供された日)から起算して60日以内に定めた支払期日までに下請代金を全額支払わないと下請法違反となります。
6 割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)
親事業者は下請事業者に対し下請代金を手形で支払う場合、支払期日までに一般の金融機関で割り引くことが困難な手形を交付すると下請法違反となります。
7 購入・利用強制の禁止(第4条第1項第6号)
親事業者が、下請事業者に注文した給付の内容を維持するためなどの正当な理由がないのに、親事業者の指定する製品(自社製品を含む)・原材料等を強制的に下請事業者に購入させたり、サービス等を強制的に下請事業者に利用させて対価を支払わせたりすると購入・利用強制となり、下請法違反となります。
8 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)
親事業者が、下請事業者に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害すると下請法違反となります。
9 不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(第4条第2項第4号)
親事業者が下請事業者に責任がないのに、発注の取消若しくは発注内容の変更を行い、又は受領後にやり直しをさせることにより、下請事業者の利益を不当に害すると下請法違反となります。
10 報復措置の禁止(第4条第1項第7号)
親事業者が、下請事業者が親事業者の下請法違反行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由として、その下請事業者に対して取引数量を減じたり、取引を停止したり、その他不利益な取扱いをすると下請法違反となります。
11 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)
親事業者が下請事業者の給付に必要な半製品、部品、付属品又は原材料を有償で支給している場合に、下請事業者の責任に帰すべき理由がないのにこの有償支給原材料等を用いて製造又は修理した物品の下請代金の支払期日より早い時期に当該原材料等の対価を下請事業者に支払わせたり下請代金から控除(相殺)したりすると下請法違反となります。
下請関係にはない通常の業務委託契約や、代理店販売の契約(代理商契約)、地方自治体や公共団体が役務を発注する際の業務委託契約、資本金にさほど差がない企業間や対等な立場で契約等においては、この下請法の適用はありませんが、契約書を取り交わすことは、商取引の上の大前提として、後々のトラブル防止のため欠かせないものですので、必ず契約書の作成・締結をするようお勧めいたします。
★当事務所では、下請法に抵触しない契約書の作成・締結のお手伝いから、下請法に反する相手方への交渉・法的手段も含めた改善要求のお手伝いをしております。
また、公正取引委員会への相談・申告窓口は、下記のとおりです。
※下記連絡先の対象エリアは、東京都・千葉県・神奈川県・埼玉県・茨城県・栃木県・群馬県・新潟県・長野県・山梨県になります。

公正取引委員会事務総局 取引部
〒100-8987
東京都千代田区霞が関1-1-1 中央合同庁舎第6号館B棟
(相談関係)企業取引課   Tel 03(3581)3373
(申告関係)下請取引調査室 Tel 03(3581)3374
※公正取引委員会により、親事業者、下請事業者のそれぞれに対して、定期書面 調査が行なわれています。
違反が認められると行政指導による是正、勧告が行なわれるほか、罰金、罰則が定められています。下請法を良く理解し、健全な取引きを心掛けましょう。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

詳しいプロフィールはこちら

-商業登記・企業法務
-,

© 2024 家族信託なら宮田総合法務事務所【吉祥寺】無料法律相談を実施中! Powered by AFFINGER5