商業登記・企業法務

今さら人には聞けない「株券電子化」の要点整理!

1月 14, 2009

「株券電子化」は、平成21年1月5日に実施されました。
昨年は、この株券電子化の話題が政府や証券会社から盛んに情報発信していましたが、まだよくご存じない方もいるかもしれません。
そこで、今さらなので人には聞けない「株券の電子化」について、分かりやすくご説明しましょう。
「株券の電子化(株式のペーパーレス化)」とは、「社債、株式等の振替に関する法律(以下「社債株式等振替法」という。)」により、上場会社の株式等に係る株券をすべて廃止し、株券の存在を前提として行われてきた株主権の管理を、証券保管振替機構及び証券会社等の金融機関に開設された口座において電子的に行うこととするものです。
従来においても、株券保管振替制度の活用により、株券そのものの受渡しや保管等の管理を株主自身が行わなくても売買や株主権の行使をすることができましたが、一方で、株券を株主自身で管理し、株券の受渡しを株主自身が行う売買等も認められており、株式の譲渡や管理に当たり様々なリスクや非効率性が指摘されていたのです。
株券電子化のメリットとして次のようなものが挙げられます。
◆株主にとってのメリット
(1)株券を手元で保管することなどによる紛失や盗難、偽造株券取得のリスクが排除できます。
(2)株式の売買の際、実際に株券を交付・受領したり株主名簿の書換申請を行う必要がなくなります。
(3)発行会社の商号変更や売買単位の変更の際に、株券の交換のため、発行会社に株券を提出する必要がなくなります。
◆発行会社や株主名簿管理人(信託銀行)にとってのメリット
(1)株主名簿の書換にあたり株券が偽造されたものでないか等のチェックを行う必要がなくなります。
(2)株券の発行に伴う印刷代や印紙税、企業再編(企業間の合併や株式交換、株式移転など)に伴う株券の回収・交付のコスト等が削減できます。
(3)株券喪失登録手続を行う必要がなくなります。
◆証券会社にとってのメリット
(1)株券の保管や運搬に係るリスクやコスト等が削減されます。
(2)株主が株券を証券保管振替機構に預託する場合や証券保管振替機構に預託された株券を引き出す場合の手続を行う必要がなくなります。
では、この株券電子化で、実際に何が変わるのでしょうか?
株券電子化の実施に際して、すでに証券保管振替機構(いわゆる「ほふり」)に預託されている株券については、一斉に新たな株式等振替制度に移行できるように措置されているため、株主が特段の手続をとる必要はありませんし、株式の売却もこれまでと同様に可能です。
つまり、そういう株主にとって、株券の電子化は直接的には関係ありません。
問題は、自宅や貸金庫などご自身で管理されている株券、いわゆる「タンス株券」です。
タンス株券は、上場企業の発行株式全体の2%前後あるのではないかと言われていますが、これらは、今月5日をもって株券という有価証券の効力が無効にはなりました。
これにより、株式(株主)の権利自体が無効となったわけではありませんが、いざ株式を売却しようとしても、すぐには売却できなかったり、一定の煩わしい手続きが必要になったり、他人名義のまま株券をもっていると最悪の場合、株主としての権利を失うというリスクもあるという問題があるのです。
タンス株券は、株主名簿上の株主の名義で、発行会社により信託銀行等に設定される「特別口座」において株式が管理されることになりますが、この特別口座が信託銀行に開設されるのは、今月の26日になります。
つまり、特別口座が開設される今月末頃までは、タンス株式の売却自体ができなくなります。
また、株式を売却するには、まず信託銀行で所定の手続きをして株式を証券会社の取引口座に移す必要がありますので、26日中に手続きを済ませても、処理の都合上実際に売却ができるようになるのは、3日程度後になるようです。
他人名義のまま株券をもっていると、本来の本人名義に回復するには、手続きはより煩雑になります。
これは、信託銀行に他人名義で特別口座が開かれてしまうため、まず口座名義を株券所持人本人の名義に変更する必要があるからです。
株券と株式受渡証明書などを信託銀行等に提出し名義回復を請求する(電子化実施後1年間のみの経過措置)か、もしくは名義株主と株券所有者との共同の申請により名義回復の請求をするかなど所定の手続きによらなければ、口座名義の回復をすることはできません。
また、もし名義株主が勝手に株を売却してしまうと、本人の株主としての権利を失うおそれもありますので注意が必要です。
最後に、株主自体に直接関係する訳ではありませんが、株券の電子化により、電子データの一括管理の都合上、システム障害でトラブルが発生する可能性があり、これを未然に防ぐ対応策が今後の課題になりそうです。
以上、今月から実施された株券の電子化について、簡単にご説明しました。

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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