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家族信託においても“倒産隔離機能”で財産を守れるか

3月 25, 2016

「倒産隔離機能」は、信託法という法律を学ぶ方にっては、非常に重要ですが、民事信託・家族信託の実務においては、あまり重要度は高くない機能ですし、そもそも多くの方がこの説明に対して誤解をしているようです。

「信託の機能として、信託財産は委託者固有の財産からも、受託者固有の財産からも独立しており、委託者や受託者が差押えを受けたり破産しても、信託財産には取り立てが及ばずに守られます。」という旨の説明があるからでしょう。

確かにこの説明は間違っていません。
でも、一つ忘れていないでしょうか?

信託にとって最も重要な人物を。
そうです、「受益者」です。

多くの書籍では、受益者と破産との関係をきちんと触れていないものが多いので、誤解が多いです。
つまり、委託者や受託者の破産に関して信託財産は影響をうけませんが、受益者の破産に対しては、取立てを免れません。

ちょっと事例を交えて考えてみましょう。
職務上、司法書士は“無限責任”を負っている訳ですが(故意又は過失によりお客様等に損害を与えてしまった場合は、当該司法書士は、その賠償額に上限なく損害賠償責任を負うということです)、もし将来的に損害賠償請求を受けてマイホームが取られてしまうのを防ぐために、信託契約を活用し、奥さんを受託者、司法書士自身が
委託者兼受益者となったとしましょう。
このマイホームは、受託者である妻が登記名義人になりますので、実際に司法書士に対して数千万円の損害賠償請求権を持つ債権者がマイホームを差し押さえようとしても、差し押さえることはできません。

では、この司法書士の資産防衛計画は大成功なのでしょうか?
世の中そんなに甘いものではありません。
そんなことが容易にできたら、世の中の社長や士業は皆信託契約で財産保全に走るでしょう。

この司法書士の財産は、所有権としてのマイホームではなく、「信託受益権」という債権を財産として保有していることになりますので、債権者は、この信託受益権に対して差押えが可能です。

結局のところ、この司法書士に精算すべき他の資産が無ければ、この信託財産たるマイホームを売却して返済しなければならないことに変わりはないのです。

また、「詐害信託」(信託法第11条)という規定も信託法には存在しますので、多重債務者などが支払困難な状況が顕在化してきてから信託契約を交わし、自分以外の者(例えば配偶者や子・孫)を受益者として設定しても、債権者を害する(詐害)の意図があったとして、信託契約が無効になることもあり得るのです。
つまり、計画倒産を試みる悪質な債務者が自己の財産を守ろうとする手段として家族信託を活用することはできません。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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