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所有者不明土地対策として相続登記等の罰則付き義務化へ

2月 22, 2021

2021年2月11日付日本経済新聞及び読売新聞の朝刊記事によると、法務大臣のの諮問機関である法制審議会は、相続や住所・氏名を変更した時に土地の登記を義務付ける法改正案を答申した、とのこと。

 

 

現在の法律では、不動産の所有者(名義人)に相続が発生した場合、当該不動産の承継者が決まっても、「相続登記」をする義務はない。

自宅や収益物件など、都市部の資産価値のある不動産であれば、自分が所有者であることを公示するために速やかに相続登記をすることが多いが、固定資産税をきちんと納税さえしていれば、故人の名義のまま放置していても、実質的に不利益はないし、罰則もない。

反対に、資産価値や利用価値の低い、地方の原野や山林、別荘については、そのまま放置しているケースも少なくない。
故人の名義のまま10年以上放置しておくと、家族・親族であっても、相続関係が複雑になったり、そもそも当該不動産を持っていること自体の把握は難しくなる。

所有者が不明の空き家や荒れ地は、誰も処分ができず、その結果、隣接地の地価が下がったり、樹木の繁茂や古家による景観・治安が悪化したりして、社会的な問題となっている。
行政による用地買収や区画整理、民間の都市開発が所有者不明土地があることでスムーズに進まないケースも多く、土地の有効活用ができないばかりか、治水・防災対策事業の弊害にもなっている。

法務省によると、所有者に連絡がつかない所有者不明土地は、全体の2割程度に達しているとのことで、その面積は九州を上回る約410万ヘクタールと言われている。
所有者不明土地のうち、、その66%は相続登記がされていないこと、残りの34%が住所変更登記がさえていないことが理由だという。

このような現状を受け、法制審議会は、民法や不動産登記法などの改正案の要綱を示した。
改正案では、下記のような項目が挙げられている。

【相続登記・住所変更登記の義務化】
●取得を知ってから3年以内に登記を申請しなければ10万円以下の過料。
●住所変更や結婚などで氏名が変わった場合も、2年以内に申請しなければ5万円以下の過料。
●法人が本社の登記変更を届け出ない場合も過料の対象。
※一連の罰則は、法施行後に新たに発生した相続が対象になり、施行前の相続などに伴う問題は一定の猶予期間を定めて適用。
●海外居住者は国内連絡先を登記簿に記載。

【行政側で強制的な対応を可能に】
●行政が住民基本台帳ネットワークで死亡者を把握し、登記簿に反映させる。
●死亡者が名義人だった不動産の一覧情報を発行して親族が簡単に把握できるようにする。
●相続発生後、10年間登記がなければ行政が法律で定める割合で遺産を配分する「法定相続」にする。

【土地の所有権を放棄しやすく】
●建物や土壌汚染、担保設定が無い土地については、法務局が認めれば、10年分の土地管理費に相当する金額を納付し所有権を放棄(国庫に返納)できる。

【所有者不明不動産の活用】
●共有者が不明の土地やビルでも、裁判所の確認・公告を経れば他の共有者が改修や用途変更等ができる。
●短期間の賃貸借は共有者の過半数で決められる。
●裁判所が選任する管理人により、不明の所有者に代わって土地や建物の売却ができる。

 

政府は、今年の3月に改正案を閣議決定し、今国会で成立させ、2023年度中にも施行を目指したい考えだという。

 

相続登記や住所変更登記の義務化の一方で、必要書類が多く煩わしい登記手続きの負担は減らし、相続人のうち1人の申し出で登記ができるように登記制度自体も大きくテコ入れするようなので、我々司法書士の登記手続きの業務は縮小する方向になるだろう。

一方で、より相続関係・法律関係の実体に踏み込んだ司法書士への相談や依頼が増えてくることは間違いないと確信する。
法的トラブルを未然に防ぐ「予防法務」や紛争性の低い法律問題を依頼人の負担を最小限に抑え最短かつスムーズに処理をするための「法務サポート業務」、具体的には「遺産整理業務・遺言執行業務」「家族信託の設計コンサルティング業務」「遺言公正証書作成サポート業務」などは、引き続き司法書士の重要な業務となり続けることだろう。

これらの業務には、最新の法令・判例の法律知識だけではなく、実務の知識・経験、アイディア力、依頼人や利害関係人とのコミュニケーション力が問われることになるので、法律専門職としてのさらなる研鑽・スキルアップが求められることになる。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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