信託終了事由についての実務的考察(よくある不適切事由) 宮田総合法務事務所 | 司法書士なら東京・吉祥寺の宮田総合法務事務所 無料法律相談を実施中!

宮田総合法務事務所
宮田総合法務事務所
HOME » 相談トピックス » 民事信託・家族信託 » 信託終了事由についての実務的考察(よくある不適切事由)

信託終了事由についての実務的考察(よくある不適切事由)

宮田総合法務事務所 代表司法書士 宮田浩志 宮田総合法務事務所 代表司法書士
宮田浩志
→プロフィールはこちら
Loading

(1)「信託財産が消滅したとき」という信託の終了事由について

信託財産が金銭のみとなる信託契約、いわゆる“金銭信託”において、信託の終了事由の一つに「信託財産が消滅したとき」という条項を盛り込んでいる信託契約書が多く見受けられます。
委託者兼受益者たる老親名義の預金口座が本人の判断能力低下により払戻手続きができない、あるいは寝たきり等の身体的な問題で銀行窓口に行けないような場合に、まとまったお金を下ろしたり送金したりできなくなる可能性があります。
いわゆる“預金口座の凍結リスク”です。

このリスクを回避するために、受託者となる子が管理する金融機関の口座(通帳名義に信託財産であることが明記される「信託口口座」又は単なる子名義の個人口座を親の金銭を入れておくために新規で用意をする「信託専用口座」のどちらかを用意することが好ましいです。ここでは、これら総称して「信託口座」と言います。)に日常的に親(受益者)側が使っているお金以外の預金(余剰の金銭)については、親が元気なうちに移動しておくことは有益です。

金銭信託の便利なところは、預けすぎたと思えば、いつでも受託者から戻してもらえる一方で、満期を迎えた定期預金や株式の売却代金、タンス預金など、信託契約の締結後に後から追加で預けたい余剰金銭が出てきた場合に、「金銭の追加信託」というやり方で簡便に受託者に託せるので、いわば受託者を銀行のATM代わりに出し入れが自由なことです。

ここで最初の「信託財産が消滅したとき」という信託契約の終了事由の検討に戻りますが、この条項自体法律的に問題がある訳ではありませんが、親の金銭を出し入れ自由にして親の生活や介護等をサポートしていく中で、受託者が管理する信託金銭がもし予期せず残高がゼロになってしまった場合、その瞬間に法律上信託が終了してしまうという事態が生じます。信託契約自体が終了してしまえば、当然「金銭の追加信託」による補充をする余地がなく、想定しないタイミングで信託契約が終了してしまう恐れがあります。

信託契約書は、あらゆる事態を想定して契約条項を設けるべきですので、敢えて「信託財産が消滅したとき」を信託の終了事由に定めなくても、受益者の死亡時や受益者と受託者が合意したときまで金銭信託を継続しておいても、実務上何ら問題ないでしょう。

 

(2)「受託者全員が死亡したとき」という信託の終了事由について

信託契約書において、「当初受託者」と予備的に「第二受託者」を置いている。
さらには、受託者が欠けたとき、受益者(受益者代理人がいる場合は受益者代理人)が新たな後継受託者を選任できる旨が条項として盛り込まれているケースはよく見かけます。

この契約書において、「受託者全員が死亡したとき」を信託の終了事由として規定したときの法的な問題についてご説明します。
契約書で規定されている受託者は、「当初受託者」と「第二受託者」だけですから、もし両名が亡くなってしまったら、解釈上その時点で「受託者全員が死亡したとき」という規定が適用されると考えるべきでしょう。
つまり、受託者の条項においては、第3順位の受託者の存在を想定しておきながら、条文の解釈上、第三受託者を選任する余地がなくなってしまうという事態が起きます(仮に後継受託者が選任できる余地があると解釈をしてしまうと、受託者全員が死亡するという事態は想定できなくなります)。なお、受託者がその任務を遂行できなくなるのは、死亡だけではありませんので、「受託者全員の任務が終了したとき」とした方が汎用性はありますが、「受託者全員」という文言の解釈上の結論としては同じになります。

改善策としては、この終了事由自体を削除して、通常通り第三受託者の選任の余地を残しておくか、「当初受託者〇〇〇〇及び第二受託者●●●●の任務終了」という条項を置き、信頼できる2名がもし管理を担えなくなるのであれば、信託自体を終了して状況に応じて成年後見制度に移行する可能性も視野に入れる必要があるでしょう。
ただ、この場合でも、信託終了に伴う清算事務・残務処理を担う「清算受託者」の選任が必要となりますので、結局「当初受託者」と「第二受託者」以外の第三の担い手の存在は不可欠になるのが実務上の問題となります。

 

(3) 「受益者が死亡し、その葬儀・納骨を終了したとき」という信託の終了事由について

「受益者が死亡し、その葬儀・納骨を終了したとき」という信託の終了事由についても、時々目にする条項になりますので、これの問題点についてもご説明しましょう。

最もシンプルな信託の設計は、受益者の死亡により信託契約が終了する設計(※)と言えます。
この“死亡終了型信託”の設計の場合、受益者の死亡により信託契約が終了しますので、信託の残余財産の帰属権利者については、信託終了時の受益者以外の者を指定することになります(信託契約終了時の受益者は既に亡くなっているので)。
具体的には、信託契約書の「信託の残余財産の帰属権利者の指定」条項の中で、財産の承継者を指定するのが一般的であり、これがいわゆる“遺言代用機能”と言える部分です。

つまり、受益者が死亡すると、それに伴い当然に財産(信託受益権の対象となる信託財産)が誰かのものに移ることになりますので、通常の死亡終了型信託は、予備的な残余財産の帰属権利者を含め、子世代や孫世代に財産を承継させる旨の内容になります。

一方、死亡終了型信託の派生形として「受益者が死亡し、その葬儀・納骨を終了したとき」という信託の終了事由を設けた場合はどうでしょう。受益者たる親が亡くなった際に、その葬儀・納骨までを信託財産の管理の中から当然に支出し、それでも残った財産について分配したいというお客様のご要望をできる限り反映させようとする専門職側の心意気は感じます。

しかし、受益者が死亡しても信託契約は終了しませんので、次順位の受益者の指定をしておかなければなりません。例えば委託者兼受益者を父親とし、父親の死亡により信託を終了させ、長男が信託財産を引き継ぐことを趣旨として設計した場合、信託契約書において第二受益者として長男を指定しておかないと法的な整合性が取れなくなってしまいます。

改善策としては、信託の設計は「受益者が死亡したとき」というシンプルな死亡終了型信託の条項にした上で、信託終了後に清算受託者が担うべき業務の一部として、亡くなった受益者の葬儀・納骨等を信託財産の中から支出すべき旨を記載しておくのがよろしいかと思います。信託の基本設計は、特に慣れるまではなるべく基本に忠実でシンプルな設計を心がけるべきで、あまり複雑な設計や特別な設計をすることは、法的整合性の問題が生じかねないリスクをきちんと認識しましょう。

※この設計の信託を「死亡終了型」という言い方をしておりますが、委託者兼受益者たる母親が死亡したら信託が終了するという“一代限り”の信託や、当初受益者たる父親と第二受益者たる母親の二人が死亡したら終了するという高齢の両親を生涯支える仕組みとしての信託というのは、最も典型的な信託と言えます。

以上のように、信託契約書の中の「信託の終了事由」という一つの条項を取ってみても、様々な実務的なリスク・ポイントが潜んでいます。
家族信託・民事信託の設計コンサルティング分野は、頭のキレる弁護士なら誰でもできる訳ではありませんし、信託銀行出身で商事信託に精通した者ならできる訳でもありません。
むしろ、そうした“腕に覚えあり”という自分の業務を過信した専門職が、大きく間違った設計・法的に欠陥のある契約条項を作っているケースが少なくありません。

家族信託の設計コンサルティング業務を依頼する相手としては、机上の理論に精通していることよりも、成年後見制度や遺言を含めた高齢者の財産管理・資産承継について実務的知識と豊富な経験を持った専門職であうこと、なおかつ家族会議の中でコミュニケーションを取りながら設計をしていく能力を持ち合わせた専門職であることが重要です(日本全国で見ても、その条件に見合う弁護士はかろうじて二桁くらいの人数しかいないでしょうし、弁護士・司法書士・税理士・行政書士等の法律系士業全体でも三桁の人数いるのかどうか・・・)。
そのような専門職を探して頂くことがとても重要ですので、専門家選びは慎重にされることをお勧めいたします。

 

「民事信託・家族信託」についてもっと知りたい方はこちら!
民事信託・家族信託のメインページへ

民事信託・家族信託に関する法律相談

無料法律相談で是非ご相談下さい。
営業時間 : 平日8:30から19:00まで (ご予約により、時間外のご相談も可能です)
※土日祝日は、事前予約にてご相談を承っておりますのでお気軽にお問合せ下さい。

無料メール相談
弊所での法律相談

法律相談トピックス  最新の記事一覧

  1. 信託終了事由についての実務的考察(よくある不適切事由)
  2. 証券会社で家族信託の信託口口座を作成する際の注意点
  3. 複数の委託者のうちの一部の者を受託者とする家族信託の可否について ~委託者兼受益者ABC、受託者Aとする信託設計~
  4. 家族信託における税務署への届出書類のまとめ
  5. 『家族信託』を活用した相続対策を専門士業と共同受任する
  6. 税理士が『家族信託』に取り組むべき5つの理由
  7. “親なき後”問題へ取り得る施策とは?
  8. 『生前契約書』と家族信託の関係性
  9. 天災・震災と家族信託
  10. 家族信託の実行に関する費用・予算は?
  11. 家族信託と成年後見制度は併用が前提か?
  12. 認知症患者の保有資産215兆円の衝撃と「家族信託」
  13. 家族信託と認知症と契約の可否
  14. 実家(地方空き家)の処分・有効活用と家族信託
  15. 信託の併合にかかる登録免許税
  16. 家族信託による金銭管理と信託口口座
  17. 家族信託における受益者の権利
  18. 成年後見制度の現実と家族信託との比較
  19. 相続対策における家族会議の重要性
  20. 家族信託を実行する際の注意点・重点ポイント
  21. 『家族信託』と生命保険の共通点・相違点
  22. 家族信託を活用すれば認知症後も暦年贈与可能?
  23. 家族信託においても“倒産隔離機能”で財産を守れるか
  24. 農地を家族信託契約の信託財産とする場合のポイント
  25. 家族信託で株式を信託する場合の注意点
  26. 家族信託(民事信託)と商事信託の比較
  27. 空き家対策特別措置法と家族信託
  28. 「家族信託」「民事信託」用語集
  29. 家族信託・民事信託に関する誤解の数々
  30. 不動産を家族信託契約の財産に入れた場合の登録免許税
  31. 家族信託・民事信託を確実に実行するための工夫ポイント
  32. 家族信託における委託者・受託者・受益者の破産~「倒産隔離機能」の本質~
  33. 家族信託・民事信託の仕組みと成年後見制度の比較表
  34. 家族信託における信託管理人と信託監督人
  35. 民事信託・家族信託の内容変更
  36. 家族信託の併合と分割
  37. 家族信託の同意権者・指図権者の役割
  38. 家族信託における受託者の信託報酬と費用償還
  39. 家族信託における受託者の任務終了事由
  40. 家族信託の受託者の辞任・解任
  41. 家族信託における受益権の譲渡・放棄等
  42. 家族信託の委託者の地位の相続・譲渡
  43. 家族信託の期間の設定と制限
  44. 家族信託の始まりと終わり(信託の開始時期と終了事由)
  45. 家族信託における後継ぎ遺贈型受益者連続信託とは
  46. 家族信託における信託宣言(自己信託)とは
  47. 家族信託と「親なき後問題」と「配偶者(伴侶)なき後問題」
  48. 家族信託における遺言信託と遺言代用信託との相違点
  49. 家族信託における遺言代用信託とは
  50. 民事信託・家族信託による“遺言信託”とは
  51. 家族信託の受託者の義務と責任
  52. 家族信託における受益権の内容
  53. 民事信託・家族信託とは ≪定義と方法≫
→ 過去の法律相談トピックス一覧はこちら

について司法書士・宮田浩志からのメッセージ

成年後見制度を補完する仕組み、“後継ぎ遺贈問題”や“親(伴侶)亡き後問題”を解決する仕組み、円滑な事業承継を図る仕組み・・・、新しい信託の仕組みを活用して、皆様の細かなニーズにお応えします!

無料法律相談を承っておりますのでお気軽にご相談下さい。


個人信託家族信託研究所
遺言相続相談オフィス
相続葬儀ねっと
日本の社長
家族信託普及協会
家族信託まるわかりチャンネル
家族信託おすすめ書籍
ノンストップ!出演
家族信託おすすめ書籍2
1600以上の法律記事から情報を検索!
  • ↓ キーワードを入力
  • ↓ よくある質問からさがす
  • ↓ 法律相談topicsからさがす
無料メール法律相談24時間受付!
  • あなたのお気に入りの記事
    お気に入りはまだありません
  • NEWS
    司法書士のつぶやき

    業務提携
    業務提携

    セミナー・講演依頼 → セミナー・講演予定はこちら
    家族信託
    司法書士おすすめ記事
  • melmagaimg1
    melmagaimg2

  • 法律のプロに相談できる 対面法律相談

    対面法律相談
  • 人気の記事一覧
    企業法務
    総会収集・運営支援
    求人・採用・転職
    1600以上の法律記事から情報を検索!
    • ↓ キーワードを入力
    家族信託まるわかり読本 家族信託まるわかり読本