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家族信託における後継ぎ遺贈型受益者連続信託とは

6月 5, 2010

民事信託の後継ぎ遺贈型受益者連続信託とは「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」とは、現受益者の死亡により、順次指定された者が新たな受益者(第二次受益者、第三次受益者・・・)として受益権を順次取得する旨の定めのある信託のことをいいます。

最大の特徴は、信託が持つ「権利転換機能」を存分に活かした相続・資産承継への利用です。
どういうことかと言いますと、本来、所有者Aがその遺産を固有の所有権として相続人Bに相続させると、Bは受け取った遺産を、以後は自分の固有の財産として自由に処分することができます(言い換えると、Bが承継した財産を誰に相続させるかは、Bの意思でしか実現できません)。しかし、信託スキームを利用することで、Bは、固有の所有権ではなく“信託受益権”という権利を相続することになりますので、Bが死んだ後に誰に相続されるかは、Aが自由に決めることができるのです。

つまり、信託により相続・譲渡すべき所有権を受益権に転換させることができ、これにより様々なニーズに柔軟に対応できる仕組みが構築可能となるのです。

「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」というのは、前の受益者が亡くなる事により次の受益者(=第二次受益者)となるべき者が受益権を取得する定めが認められている「後継ぎ遺贈型」と、受益者の交代が複数回認められている「受益者連続信託」とを組み合わせた信託ということが言えます。
前述のとおり、受益権の承継は、一度に限らず順次受益者が指定されていても構いませんが、その信託期間は、信託がされたときから30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって、当該受益者が死亡するまで又は受益権が消滅するまでとされています(信託法第91条)。つまり、30年を経過した後は、受益権の新たな承継(受益者の交代)は一度しか認められません
なお、信託設定時において、受益者が存在している必要はありません。
つまり、まだ産まれていない孫や姪甥を受益者として定めておくことも有効です。

 

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◆信託行為

遺言又は契約による信託となります。

 

◆メリットとデメリット

遺言において「妻に相続させ、妻が死亡したら長男に相続させる」と記載しても、民法上規定の無いいわゆる“後継ぎ遺贈”は、無効というのが通説ですが、この信託の仕組みを利用し、「妻を受益者とし、妻が亡くなったら長男を第二受益者とする」といった「連続型受益者」の設定をすることで財産の承継が可能となります。
但し、前述のとおり、信託期間の制限なく受益者の交代が繰り返されるのではなく、信託がされた時から30年を経過した後は、受益権の新たな承継は一度しか認められません。
なお、受益権については、死亡による受益者の変更の都度、遺留分減殺請求の対象となると考えられますので、注意が必要です。
また、死亡による受益者の変更の都度、受益権が相続税の課税対象となることにも注意が必要です。

 

◆後継ぎ遺贈型受益者連続信託の具体的な利用例

前述しましたとおり、現行の民法では無効とされている複数段階における財産承継(“後継ぎ遺贈”)を実質的に可能にする手段として、大変有効な信託です。
「遺言信託」や「遺言代用信託」と合わせて利用することで、「親亡き後問題」「配偶者(伴侶)亡き後問題」を抱える方にも利用できる信託方法と言えます。
委託者自身を第一受益者とし、委託者が亡くなった後は病弱な配偶者を第二次受託者とし、配偶者が亡くなったら、子を第三次受益者とする・・・、そして信託終了時に最終的に残った信託財産の権利帰属者に公的機関や介護施設等を指定して遺贈する・・・など、夫婦・世代間の円滑な財産承継が可能となります。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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