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家族信託における委託者・受託者・受益者の破産~「倒産隔離機能」の本質~

7月 7, 2012

信託の特徴の一つとして、「倒産隔離機能」が挙げられます。
この機能を一言で説明すると、信託財産は、委託者・受託者の固有の財産とは区別されるというものです。
具体的にみてみましょう。

委託者が破産した場合

委託者が破産しても、信託財産は委託者の財産からは切り離されており、破産手続きに組み込まれることはありません。
ただし、委託者が信託の倒産隔離機能を活かし、自らの債務の弁済を逃れる意図で信託の仕組みを利用する場合、つまり委託者が債権者を害することを知って信託をした場合(これを「詐害信託」といいます。信託法第11条)には、債権者側から信託の取り消しをすることができます。

 

受託者が破産した場合

信託法第25条第1項において、「受託者が破産手続開始の決定を受けた場合であっても、信託財産に属する財産は、破産財団に属しない。」と定められており、受託者が破産しても、信託財産が脅かされる心配はありません。
また、受託者が民事再生手続きや更生手続き等を開始したり、受託者個人に対する強制執行(差押え・仮差押え・仮処分)が行われても、信託財産は一切の影響を受けません。
ただし、受託者が破産手続開始の決定を受けた場合には、受託者の任務が自動的に終了してしまいます(信託法第56条第1項3号)。
なお、受託者が破産手続開始の決定を受けても、受託者の任務が終了しない旨を信託行為で定めることもできます。

 

受益者が破産した場合

受益者が破産した場合信託受益権は、債権としてそれ自体財産権の一つですので、受益者が破産した場合、信託受益権が破産財団に組み込まれます。

つまり、通常の所有権や債権と同様、破産管財人が受益権(信託財産)を換価処分した上で、債権者への配当に回されることになります。
多くの方がよく誤解されるところですが、『倒産隔離機能があるから、信託財産にしておけば、自分が債権者から督促を受けても、あるいは自分が破産しても、その財産が守られる!』というのは、大きな間違いです!

委託者と受益者が異なる信託を設定した場合でなければ、委託者の債権者から財産は守れません。
言い換えれば、受益者を委託者以外に設定する信託(=他益信託)でなければならないことになりますので、その時点で「贈与」をしたことに他なりません。
つまり、敢えて信託を組まなくても、平常時(返済不能に陥る前)において単純に第三者に贈与しておくのと実質的には変わらないことになります。
贈与した後も管理処分権限を手元に置いておきたいというニーズに対しては、信託を組む意味は大きいですが、例えば、配偶者にマイホームを贈与するというケースでは、敢えて信託を組まなくても、不動産自体を贈与することで、将来の破産によるマイホームを失うリスクを回避することにはなり得るでしょう。

結論:信託を組むという手法で、資産を倒産から守るのは難しい・・・

結論として、信託を組むという手法で、財産を持つ方(委託者)の資産を倒産から守るということは難しいです。
それが簡単に実現できたら、借金のある人はみんな信託を設定して、債権者から簡単に財産を守ることが可能になってしまいます。
世の中、そんなに甘くはありません・・・。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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