信託における課税法上は、受益者が信託財産を有していると考えますので、単に財産を管理しているだけの受託者が死亡し、受託者の変更が生じても、受益者に変更さえ生じなければ、相続税等の課税が発生することはありません。
例えば、委託者を父A(80)、受託者を息子X(55)、受益者を母B(78)とした場合を考えてみましょう。
信託財産に不動産があった場合には、信託設定時に受託者である息子Xの住所・氏名が不動産登記簿の甲区(所有権に関する事項欄)に記載されます。
その後、息子Xが父Aよりも先に死亡したとします。
そして、信託契約の条項に従い、Aの孫Z(30)が新たに受託者(第二受託者)になるとすると、登記簿には、息子Xから孫Zへの所有権移転登記がされます。
ただし、この場合、あくまで信託不動産の管理・処分権限を持つ者に変更があっただけで、受益者(財産権の帰属先)には変更がないので、本件信託財産に関して相続税等の課税の余地は生じません。