結論から申し上げますと、信託銀行に相談をしても、家族信託・民事信託には対応できません。
むしろ、信託銀行が対応できない部分を家族信託が担うというのが正しいイメージと言えるでしょう。
信託銀行が取り扱っている信託業務は、金融庁の監督下に置かれながら業務を行う「商事信託」というもので、預ける財産も原則として「金銭」に限られます。
つまり、金銭信託が主で、不動産や未上場株式といった一般個人の方が最も利用したい財産管理のニーズには、なかなか対応できないのが実状です。
一方の「家族信託」「民事信託」は、信託業の免許を持たない受託者、特に家族を受託者として財産管理を託す仕組みのことを言いますので、金融庁の監督下にも置かれない、自由な財産管理と資産承継を実現できる仕組みです。
預ける財産も、金銭だけではなく、不動産や未上場株式、金銭債権(貸付債権・売掛債権など)、株式・投資信託等の有価証券、著作権・特許権等の知的財産権など様々です。
このように、「商事信託」と「家族信託」「民事信託」の概念や仕組み・活用方法は、全く異なると言えます。
もちろん、商事信託と民事信託・家族信託は、対立構造にあるのではなく、それぞれの特質を生かし、うまく使い分けたり、補い合ったりして活用すべき仕組みであります。
まずは信託銀行ではなく、家族信託に精通した法律専門職に相談をし、その専門家を交えて、家族会議の中で家族信託・商事信託の比較検討・使い分けなどについて、しっかりと検討することが大切です。