実際に、親の財産管理を仲良しの姉妹が二人で受託者となって業務を分担したケースがあります。
また、長女(姉)と長男(弟)が二人で受託者になり、施設入所している老親の日常的な支出等は、近くに住む長女が担い、親元から離れて暮らす長男は、普段使うことの無い非常用資金を受託者として預かっているケースもあります。
受託者が二人とも信託専用口座をインターネットバンキングに対応させることにより、お互いが管理する口座をID・パスワードで確認し合えるので、いざという時の対応や収支状況を即座に確認できて安心かつ効率的な運用ができている事案もあります。
ただし、注意すべき点があります。
受託者が複数いる場合、信託事務の処理については、保存行為を除いて原則として受託者の過半数をもって決するとなっております(信託法第80条第1項)。
通常、受託者を複数にすると言っても「2名」であることが多いので(受託者を3名以上にすることは、効率性や紛争性を考えても非現実的なので)、実際は2名の意見が一致しなければ、信託事務の遂行に支障が出ることになりかねません。
そのリスクを踏まえ、家族内で家族信託に精通した法律専門職を交えてきちんと話し合い、敢えて受託者を2名にするのか、受託者を2名にした場合にどちらかの意思決定を優先するような別段の定めを置くのか(信託法第80条第6項)、あるいは受託者は単独にして、他の兄弟は第二受託者として後ろに控えておくか、等の検討をすることが好ましいです。
なお、信託財産は受託者全員の「合有」となりますので(信託法第79条)、共同受託者の一人が任務終了した場合、残りの受託者が当然に権限を有することになります(新たな受託者を追加で選任しなくても問題ありません)。