連絡をする義務がある場合とそうでない場合があり得ますが、原則として相続人全員に連絡をするべきだと言えます。
生前に故人や相続人間で確執があったとしても、死亡した旨や葬儀・納骨の日時等の連絡をしないで、一部の相続人のみが手続きを進めてしまうことは、あまりお勧めできません。
故人を弔う大切な儀式である葬儀等に参列する機会を奪うことは、後でそのことが発覚した時に、相続人間での紛争を表面化させる可能性が非常に高いからです。
どんな事情があるにせよ、きちんと“筋”を通すことは必要だと考えますので、形式的だけでも、相続が発生した段階でその相続人や親族には全員に声を掛けることをお勧めします。
また、葬儀や納骨等の場面とは別に、遺産整理・遺産相続の手続においても、連絡をとることが必要になります。
自筆証書遺言(手書きの遺言書)がある場合、家庭裁判所に≪遺言書検認≫の申立手続をする必要があります。その際に相続人全員に対して裁判所から検認期日の通知が届くことになりますので、死亡した旨と遺言書があることは、その時点で明らかにあります。
公正証書遺言がある場合は、その遺言内容を一部の相続人(又は受遺者)のみで執行することは可能です。
しかし、遺留分の権利を持つ相続人がいる場合には、結局どの段階かで連絡を取らざるを得なくなる可能性があります(ただし、故人の兄弟や姪・甥が相続人となる場合は、遺留分の概念は発生いたしませんので、必ずしも相続人全員に連絡を取らなくても遺産整理手続がすべて完了する場合もあります)。
さらに、遺言執行者が就任する場合には、遺言執行者は、相続人全員に対して、速やかに相続財産の目録を交付する義務を負いますので(民法第1011条)、相続人全員に連絡をしないことは、法律に抵触することになります。
以上を踏まえますと、相続手続・遺産整理・遺言執行の際には、“義理”や“礼”を尽くし、きちんとした手順を踏んでおくことで、感情的な対立を最小限に抑え、結果として諸手続きがスムーズに進められるということは少なくありません。
どういった方針・手順で遺産整理・遺産分割を進めるかは、ケース・バイ・ケースですので、詳細は弊所までご相談くださいませ。