相続が発生し、本人と成年後見人が同じ相続人の立場になる場合、特別な場合を除き法律上は、本人と成年後見人は利害が相反する(いわゆる「利益相反」)とみなされます。
つまり、利益相反の場合には、成年後見人には当該事案について本人の代理権がなくなりますので、そのままでは有効な遺産分割協議をすることができません。
この場合、後見監督人がいれば、後見監督人が本人を代理して遺産分割協議に参加することになります。
後見監督人がいない場合には、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を求めることになります。
遺産分割協議をするだけの目的ならば、後見監督人の選任を申立てるのではなく、特別代理人の選任を申し立てることをお勧めします。
というのも、特別代理人は、その目的が達成した(遺産分割協議がまとまった)時点で特別代理人はその役割を終えますが、後見監督人は、遺産分割協議をまとまっても家裁の判断がない限り、後見監督人が外されることはありません。
つまり、遺産分割協議が終了した後も、成年後見人の行動を監督する立場が維持されますし、その間後見監督人の報酬も発生することになるからです。
なお、遺産に関して、プラスの資産より負債の方が大きく、本人と成年後見人が共に相続放棄するような場合には、本人と成年後見人との利害は相反しませんので、成年後見人から有効に相続放棄の手続きが可能です。