判断能力の衰えがまだ浅い(例えば補助類型程度)であれば、後見制度を利用したとしても本人の残存能力の範囲内で法律行為は可能です。
したがって、この場合でも遺言書は書けますので、ご自分の明確な意思で相続税対策としての生前贈与や生命保険契約をすることも可能な場合があり得ます(ただし、後見人である推定相続人自身が贈与等を受けることは利益相反でできません。
また、本人の資産との兼ね合いで贈与等の金額の妥当性も問題になりますので、全てOKとはいえません)。
ただし、判断能力がまだしっかりしていたとしても、推定相続人の一部の方だけに対して生前贈与等をすることは、後々相続人間でトラブルを起こす可能性がありますから、慎重に判断されることが必要です。
本人の判断能力の低下が激しく合理的な判断ができない状態になっているために後見制度を利用しようとする場合、その段階では、もはや相続税対策はできません。
後見制度自体、本人の権利を擁護し財産を守るための制度ですが、相続税対策は、本人のためではなく相続人のための行為ですので、その趣旨が相反します。
したがって、本人の財産を減少させる相続税対策(生前贈与や新たな生命保険契約の締結)は、原則的に認められないのです。