法定後見の場合
法定後見の場合は、家族や推定相続人の一部の反対があっても、本人の判断能力の低下が医師の診断書等から明白であり、本人の福祉上必要であると認められれば、成年後見制度を利用することができます。
ただし、誰が後見人になるかについては、若干の問題があります。
後見申立て時に後見人候補者として名前を挙げた方に対し、もし家族や推定相続人の一人からでも、その就任への反対意見が出れば、当該候補者が後見人になることは難しくなります。
(家庭裁判所は、本人の推定相続人に照会書を送付し、後見人候補者に対する意向を確認します)
もちろん、就任への反対意見を述べた側が希望・推薦する候補者が就任することもできません。
このような場合、家庭裁判所は、紛争性のある家族・親族関係の後見事案として、推定相続人全員に縁や利害関係の無い全くの第三者である弁護士・司法書士を後見人に就任させる可能性が高くなります。
任意後見の場合も、本人の判断能力の低下がみられた際には、家族や推定相続人の一部の反対があっても、申立てにより任意後見を発動することができます。
任意後見の場合
なお、任意後見の場合は、法定後見とは異なり、家族・親族の一部から任意後見人就任予定者への就任反対意見が出ても、契約で本人が望んで任意後見人を定めている以上、就任予定者がほぼ確実に後見人になることができます(任意後見の場合、家庭裁判所は、推定相続人に対して照会書を送付する手続きを取りません)。
親族間で誰が本人を支えていくかについて争いがあったり、そもそも親族間が不仲である場合などは、本人が信頼し就任を望む子や孫・甥姪等が確実に後見人に就任してもらえるように、予め元気なうちに任意後見契約を交わしておくことが必要かもしれません。