成年後見(法定後見・任意後見)、高齢者等の財産管理

相続人から死後事務委任契約を解除されませんか?

5月 7, 2016

HU016_L死後事務委任契約は、遺言書では対応できない事項や死後すぐに行わなければならない事務、法律的行為・財産的価値の伴わない行為について、故人が生前の契約において、主に第三者(例えば「司法書士A」としましょう)に依頼をしておくものです。

近しい相続人や信頼できる親戚等がいれば、そもそも死後事務委任契約を締結する必要はありません。
家族が法定相続人の立場として、あるいは親族として、葬儀・納骨や遺品整理作業等を行えば済むからです。

実際に、葬儀・納骨費用の支払い、故人の遺品整理、住居の明渡し、未払い金の精算等をできる親族がいない場合には、
他人がその手続きを担わなければなりません。
死後事務委任契約は、一般的に身寄り(相続人)がいないか、いても長年没交渉だったり関与を拒否しているケースで利用されていますが、中には故人の意に反する形で関与をしてくる相続人もいます。

つまり、死後事務委任契約の内容について、快く思わない相続人がいる場合があります。
例えば、葬儀を一切執り行わないことを故人が希望していても、相続人としては、世間体もあるので葬儀を行おうとする場合というのが想定できます。

このような場合、司法書士Aは、生前の契約により葬儀をしないで直接○○寺へ納骨してほしいと依頼を受けていれば、その故人の意思を最大限尊重し、
実現に向けて遂行することになります。
一方の相続人は、よく知らない第三者の司法書士Aが関与するのを嫌い、死後事務委任契約を解除しようとすることも考えられます。

そもそも、委任契約は、両当事者がいつでも解除できるのが原則(民法第651条)ですので、当事者の地位を承継したその相続人も契約解除権を持っていると考えられます。

そこで、死後事務委任契約においては、委任者の契約解除権を制限(放棄)し、特定の事由に該当した時でなければ契約解除できない旨の条項を盛り込みます。
そうすることで、その相続人も当該解除権の制限(放棄)付の委任契約の地位を引継ぐことになりますので、相続人にとって過度な不利益が生じる等の特段の事情がなければ、死後事務委任契約を相続人が解除することはないと考えられます。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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