朝日・読売・日経新聞各紙の記事によりますと、政府は10/14、社会問題になっている子どもの無戸籍状態を防ぐため、父親を決める民法の「嫡出推定」規定(民法第772条)を見直す民法改正案を閣議決定した、とのこと。
嫡出推定の見直しは、明治31年の民法施行以来初めてのことで、合わせて、女性は離婚後100日間は再婚できないという「再婚禁止期間」の規定(民法第733条)も撤廃する。
この改正案は、開会中の臨時国会に近く提出し、今国会での成立を目指す、とのこと
もともと嫡出推定の規定は、早期に父子関係を確定することで子の利益を守る目的で、民法第772条第2項において、次のように定められていた。
①離婚後300日以内に生まれた子は「前夫の子」と推定する。
②結婚から200日経過後に生まれた子は、「現夫の子」と推定する。
しかし、現行法では、再婚相手との子を出産しても、「離婚後300日以内」に生まれた子であれば、「前夫の子」とみなされてしまう弊害があった。
たとえば、夫のドメスティックバイオレンス(DV)から逃れるなどした女性が、離婚裁判や離婚調停を経て離婚が成立した後、別の男性との子を産んだケースにおいて、離婚後300日以内であれば前夫の子とされることを避けて出生届を出さず、子どもが無戸籍になるケースが問題になっている。
改正案では現行法の規定を維持しつつ、「母親の再婚後に生まれた子は、再婚後の夫の子と推定する」という規定を設けることで、出産時に再婚していれば「現夫の子」とすることができるので、この無戸籍の子の問題の解消を図ることができる。
現行の規定では、仮に離婚直後に再婚した場合、再婚から200日経過後~離婚から300日以内の間に生まれた子どもに関し、前夫と現夫のどちらも父親と推定されてしまう事態が生じる。
このため女性に100日間の再婚禁止期間が設けられているが、今回の見直しにより父親推定の重複はなくなるため、再婚禁止の規定は撤廃される。
現在の民法では、裁判所への嫡出否認の申立て(DNA鑑定などで戸籍上の親子関係を否定するための制度)を父親にしか認めていないが、改正民法により母親・子どもにも権利が拡大される。
また、申立て期間も出生を知って1年以内から、原則「3年以内」であれば利用できるようにする。
これらの改正案が成立すれば、公布から1年6カ月以内に施行され、嫡出推定の見直しは、施行日より後に生まれた子どもに適用されることになる。
改正案には、「しつけ」を口実に虐待が正当化されないように、親権者に子どもを戒めることを認める「懲戒権」の削除も盛り込まれた。
代わりに体罰や「健全な発達に有害な言動」を禁止する規定が追加されるそうだ。