信託の受益者は、受託者に対して、信託財産から一定の経済的給付を受ける権利(受益債権)を有しています。
それと同時に、このような「受益債権」という権利を確保するために、受託者に対して帳簿閲覧請求や信託違反行為の差止請求などを様々な権利を有します。
つまり、下記の2つの権利を総称して、信託の『受益権』と言います。
a) 信託財産から一定の給付を受ける権利(受益債権)
b) 上記の受益債権を確保するための様々な権利
上記b)の権利の代表的なものは、下記のものです。
●受託者の権限違反行為の取消権
●受託者の利益相反行為に関する取消権
●信託事務の処理の状況について報告を求める権利
●帳簿等の閲覧または謄写の請求権
●受託者に対する説明・損失のてん補または原状の回復の請求権
●受託者の法令・信託違反行為の差止請求権
●裁判所に対する受託者解任の申立権
●裁判所に対する新受託者選任の申立権
●信託財産への強制執行等に対する異議申立権
●信託の変更、受託者の解任・選任、信託財産管理人の選任・解任、信託監督人の選任・解任、信託の終了に係る請求権
●破産管財人等による信託財産処分行為等の差止請求
●受託者に対する説明・損失てん補・原状回復・受託者の違反行為の差止め
特に、家族信託・民事信託における受託者は、信託業の免許を持つ信託銀行や信託会社ではなく、いわゆる素人たる家族・親族です。
従いまして、受託者による信託事務が長期にわたり忠実かつ適切に遂行されているのかのチェック機能を設けておくことは非常に重要です。
通常は、受益者自らが目を光らせていればいいのですが、受益者自身が高齢や病気等の事情により受託者を十分に監視・監督できないとき又はできなくなる可能性に備え、「信託監督人」「受益者代理人」等を定めておくことで受益者自身に代わって監視・監督の権限を行使できるようすることができます。
受益者が有する上記の権利の代表的なものは、下記のとおりになります。
以上のように、受益者の利益保護のために諸権利が付与されています。
受益者が複数ある場合、それぞれに前述の権利等が付与されることになりますが、受益者の全員一致による意思決定が原則となります。
但し、信託行為に定めをおくことにより、例えば「受益者集会」における多数決による意思決定が認められています。