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家族信託の信託不動産にも「居住用財産の3,000万円特別控除」が適用できるか

1月 19, 2023

個人が、居住用財産(自宅の土地・建物)を売却して譲渡益が生じた場合、この譲渡益に対しては所得税の課税となりますが、この譲渡所得税の計算において、一定の要件を満たせば、譲渡益から金3,000万円を控除できる(譲渡益が金3,000万円を超えなければ納税が発生しない)制度があります。

これを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」(通称「居住用財産の3,000万円特別控除」)といいます。

居住用財産の3,000万円特別控除の特例の適用を受けるための要件

居住用財産の譲渡所得に係る3,000万円特別控除の特例の適用を受けるためには、下記1~6の要件をすべて満たす必要があります。

要件1. 下記の㋐~㋓のいずれかに該当する居住用財産(建物+土地又は借地権付建物)であること。

  • ㋐現在、住んでいる自宅
  • ㋑転居済みの場合、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年末までの売却
  • ㋒土地の売却契約締結が自宅の取壊日から1年以内であり、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年末までの売却であること。さらに、その土地を駐車場などで他人に貸していない
  • ㋓単身赴任の場合、妻子が住んでいる建物

※この特例は、次のような家屋には適用されません。

  • (あ)この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる建物
  • (い)居住用建物を新築する期間中だけ仮住まいとして使った建物、その他一時的な目的で入居したと認められる建物
  • (う)別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する建物

要件2. 売主と買主が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。

※特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

要件3. 売却した年の前年及び前々年にこの特例又はマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。

要件4. 売却した年を含め3年以内にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。

売却した年を含め3年以内=売却した年・前年・前々年。

要件5. 他の特例の適用を受けていないこと。

売却した建物や土地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。

要件6. 災害によって滅失した建物の場合、その土地に住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までの売却であること。

【信託不動産や信託受益権の売却時にも適用できるか】

「居住用財産の3,000万円特別控除」の適用については、前述の①~⑥の要件を満たせば、所有権財産として建物とその敷地を保有している場合に限らず、信託財産として受託者に管理を任せた財産であっても、実質的に受益者としてその財産のオーナーとなっているケースでは、その信託財産となった居住用不動産を受託者が売却した場合でも適用を受けることができます

また、居住用不動産を信託財産に含む「信託受益権」自体を受益者が売却した場合でも適用を受けることができます

【参考:税務通達(国税庁ホームページより)】

(居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用)
2-54 措置法第35条第1項((居住用財産の譲渡所得の特別控除))に規定する「その居住の用に供している家屋」又は「その敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利」には、個人の有する信託財産の構成物でこれらの資産に該当するもの(以下この項において「信託居住用財産」という。)が含まれるのであるが、この場合における同条の規定の適用については、次の諸点に留意する。
(1) 信託居住用財産の譲渡には、信託受益権の譲渡によるものが含まれること。
(2) 譲渡された信託財産である家屋が同条第1項に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当するかどうかは、当該家屋の受益者について、措置法通達35-2又は35-3に定めるところにより判定すること。
(3) 措置法令第23条第1項((特例の対象となる家屋の範囲))に規定する「その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋」の判定の基礎には、その者の有する信託居住用財産が含まれること。
(4) 信託居住用財産の譲渡が措置法第35条第1項に規定する「特別の関係がある者に対してするもの」に該当するかどうかは、その譲渡に係る信託居住用財産の受益者について判定すること。
(5) 同項に規定する「その年の前年又は前々年において既にこの項又は第36条の2若しくは第36条の5の規定の適用を受けている」かどうかの判定の基礎には、その者の有する信託居住用財産の譲渡が含まれること。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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