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相続空き家の3,000万円特別控除(租税特別措置法35条3項)について、信託契約の残余財産の帰属権利者も適用できるか

相続・遺贈で取得した空き家を3年以内に売却した場合において、その譲渡益については金3,000万円まで控除(つまり課税されない)という被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例』(通称相続空き家の3000万円特別控除)があります(租税特別措置法35条第3項)。

 

この租税特別措置法第35条第3項は、相続に伴い放置される空き家の発生を抑制するため、下記の①~⑨の要件にあてはまる場合に適用することできます。

①相続開始直前において被相続人が一人で居住していること

②相続開始から譲渡まで貸付用又は居住用として利用されていないこと

③建物が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること

④建物が区分所有建物でないこと

⑤相続開始から3年を経過する年の12月31日までの譲渡であること

⑥譲渡の時点で建物が耐震基準を満たすか、建物を取壊した後の底地を譲渡すること

⑦譲渡価格が金1億円以下であること

⑧譲渡の相手が配偶者・直系血族など特別の関係がある者でないこと

⑨相続税の取得費加算や収用交換の特例の適用を受けないこと

 

さて、この『相続空き家の譲渡所得の特別控除』ですが、信託契約終了に伴い残余財産の帰属権利者が取得した不動産を譲渡した場合にも、適用できるかについて、令和4年12月20日付東京国税局審理課長回答をご紹介します。

【事案の概要】※ 実際の照会内容よりもシンプルな事例にしております

委託者兼受益者となる母親Aと受託者となる長男Bとの間で、母親Aの自宅(居住用家屋及びその敷地。以下「本物件」といいます。)を信託財産とする信託契約を締結。この信託契約は、受益者たる母親Aの死亡により終了する設計で、母親Aの死亡により当該信託契約は終了し、残余財産となった本物件は、残余財産の帰属権利者として指定された長男Bに帰属。
その後、母親A死亡の翌年に長男Bが本物件を売却しましたが、それにより発生した譲渡益につき、租税特別措置法第35条第3項《相続空き家の譲渡所得の特別控除》に規定する特例を受けることができるか、というものです。

 

【東京国税局の回答の要旨】
 租税特別措置法第35条第3項に規定する特例は、「相続又は遺贈」による被相続人の自宅の取得をした相続人(包括受遺者を含む)が、一定の譲渡をした場合に、その譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることができる旨規定しています。
ところで、信託契約などにより信託の受益権を取得する行為や、信託が終了し残余財産が権利者に移転した場合などについては、法律上の「贈与」又は「遺贈」には該当しないものの、実質的には贈与又は遺贈と同様の効果をもたらすことから、相続税法においては、これらの取得又は移転などについて贈与又は遺贈による取得とみなして相続税又は贈与税の課税対象とする措置が講じられています(相続税法第9条の2)。
この点、本件特例は、相続税法の規定により遺贈等による財産の取得とみなされる場合を対象に含む旨は規定していません。
また、本件特例は、相続人が、相続により、その意思の如何にかかわらず、被相続人居住用家屋等の適正管理の責任を負うこととなることを踏まえた趣旨の下、適用対象者を「相続人」に限定し、かつ、「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした場合に限り適用すると規定したものであると考えられるところ、信託終了による残余財産の取得は法律上の相続又は遺贈には当たらず、受託者は信託行為の当事者であること、信託行為の当事者ではない帰属権利者は、その権利を放棄することができること(信託法183③)を踏まえると、上記本件特例の趣旨の下では、帰属権利者による残余財産の取得を相続人による相続又は遺贈による財産の取得と同様に取り扱うことは相当ではないと考えられます。
以上のことから、信託契約に基づき、委託者兼受益者の相続開始という信託終了事由の発生により信託が終了したことに伴い、当該信託に係る残余財産を帰属権利者が取得したことは、本件特例に規定する相続人による「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当するとは認められず、また、死因贈与契約に基づき当該残余財産を取得したとする事情も認められませんので、当該残余財産の譲渡に係る譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることはできません。

 

【まとめ】

昨年末に出されたこの東京国税局審理課長回答は、「相続又は遺贈による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人」という租税特別措置法第35条第3項の文言を厳格に解釈したといえます。

ただ、放置空き家を抑制するという政策的観点からみれば、『相続空き家の3000万円特別控除』を信託の帰属権利者に適用しても良いのではないかと考えますが、この国税局の回答が実務に与える影響も少なくないです。

つまり、老親が独居で暮らす実家について、老親亡き後に信託の残余財産帰属権利者として実家を承継した相続人が換価処分する場合には、税制優遇措置が受けられない点に注意したいところです。

 

【参考:国税庁のホームページ】

信託契約における残余財産の帰属権利者として取得した土地等の譲渡に係る租税特別措置法第35条第3項に規定する被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用可否について

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/joto-sanrin/221220/index.htm

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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