遺産相続手続・遺産整理・遺言執行

相続税対策における養子縁組の落とし穴

10月 1, 2011

HU027_L相続税対策を兼ねて養子縁組をするケースがあります。
なぜ養子縁組が相続税対策になるかというと、自分の子(相続人)が一人増えることになり、相続税における基礎控除が増加することになるからです。

同様の趣旨で、自分の孫を養子にするケースもあります。
その場合、相続人は、自分の子と孫が同じ法定相続人として対等の相続分を有することになります。
しかし、このように孫を養子にする場合で、養子がまだ未成年である場合、次のような問題があります。

具体的な例として、推定相続人が実子Aのみの場合で、本人甲の孫X(Aの子)を養子にするケースを想定しましょう。
甲が急きょ死亡してしまうと、相続人は実子Aと養子X(Aの子)の二人となります。
甲が遺言書を書いていなかった場合は、法定相続分による相続になりますので、すべての各遺産について、AとXが2分の1ずつ相続することになり、もし2分の1ずつでない分割方法にする場合(例えば、不動産はどちらか単独所有にしておきたい等)、遺産分割協議が必要になってしまいます。
そこで、ちょっとした問題が生じます。

未成年者Xは、甲の養子になったことで、その親権者はAではなく甲になります
甲の死亡により、Xには親権者がいなくなった状態になりますので(実親Aの親権が自動的に復活するわけではありません)、家庭裁判所に「未成年後見人選任」の申立てをしなければなりません。

さらには、前述の遺産分割協議においては、AとXの未成年後見人との話し合いになり、未成年者Xが取得する財産は、原則として遺産全体に対して、法定相続分(今回は2分の1)を確保しなければならなくなります。

つまり、甲から引き継いだ遺産を管理・処分することに一定の制約を受けかねなくなりますので、注意が必要です。
さらには、もしXの未成年後見人にAが就任しようとすると、遺産分割においてAとXが利益相反関係になってしまいますので、再度家庭裁判所に「特別代理人」の選任をお願いして、Aと特別代理人とで遺産分割協議をすることになります。

以上のように、相続税対策として、比較的安易に未成年の孫を養子にだけしてしまうと、もしご本人が早死にしてしまったときに思わぬ事態を招くことになりかねません。
結論として、相続税対策を兼ねて養子縁組をする場合には、特に養子が未成年であれば、必ず遺言書の作成と合わせてすることをお勧めします。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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