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株式会社が家族信託の受託者になれますか?

8月 22, 2017

受託者が個人の場合、死亡等により信託事務が滞るリスク(例えば受託者が管理する口座が凍結するリスク)がありますので、円滑な信託事務の遂行を考えた時に、法人を受託者にできないかというご相談は、少なくありません。

結論から申し上げますと、個人に限らず法人も受託者になることは可能ですし、その際の法人は、一般社団法人であっても、株式会社・有限会社(以下、「株式会社等」と言います。)であっても理論上問題ありません
しかし、以下に述べる理由において、これから受託者として信託事務を担う法人を設立する場合は、営利・非営利を問わない一般社団法人を設立する方も多いと言えます。

まず、既存の事業を行っている営利目的法人に、プライベートな老親の財産管理業務を担わせることの違和感・リスクがございますので、本業とは業務を切り離すために、別の法人を設立することをお勧めすることは多いです。
その上で、法人を新たに設立すれば、法人の所得に関わらず法人住民税の均等割を課されますし、税務申告の手間や諸費用も発生しますので、少なくとも法人運営コストを確保するためには信託報酬を貰うことを前提で考えていく必要があります。
また、株式会社等は営利目的法人ですので、株式会社等が信託報酬を得ないで受託者業務を遂行することは、経済合理性に欠けるとの指摘もありますので、やはり株式会社等は信託報酬を貰うケースが通常だと言えます。

その一方で、受託者法人が信託報酬を得る場合には、信託業法への抵触の余地が出てきますので、その点に対する配慮が必要です。
その点については、信託業法に抵触する余地を排除するために、一般社団法人・株式会社等ともに、定款の事業目的に「信託業法に抵触しない民事信託の引受業務」等を記載することをお勧めいたします。

また、受託者を担うための法人(これを「受託者法人」と言います)を設立するにあたり、設立時の構成員(一般社団であれば「社員」、株式会社等であれば「株主」)を誰にするかという問題があります。
一般社団法人の場合、社員たる地位は、当然には相続により承継しません。
一方の株式会社等においては、株主たる地位は「株式」という資産として相続人に承継されます。
受託者にするのは、一般社団と株式会社等のどちらがベターかというの判断は難しいですが、いずれにしても長期的にみて、構成員が入れ替わることも想定し、受託者法人の運営がスムーズにいく設計をしていくことが重要です。

なお、受託者法人として一般社団法人を活用するケースと、一般社団法人に個人資産を移して相続による承継から外すための資産保有法人としての一般社団法人の活用とは、全く別の議論ですので、混同しないようにお気を付け下さいませ。

また、一般社団法人の活用が流行っているからと言って、短期的な信託期間(例えば高齢の父親の死亡まで)を想定している場合には、敢えて法人受託者にせずに、機動力のある個人を受託者とする設計の方がシンプルなケースも多いので、十分に検討が必要です。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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