配偶者への生前贈与の適用条件
- 贈与の時点で婚姻期間(婚姻の届出の日から起算)が20年以上
- 居住用不動産(居住用の土地、借地権、家屋)または居住用不動産取得のための金銭の贈与
- 贈与の年の翌年の3月15日までに、贈与を受けた居住用不動産。または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、実際に居住 しており、その後も引き続いて居住する見込みであること
- 過去において同じ配偶者から贈与税の配偶者控除適用を受けていないこと
生前贈与の税額の計算
1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産が2110万円(基礎控除110万円+配偶者控除2000万円)以内であれば贈与税はかかりません(不動産取得税はかかります)。
※ 配偶者控除を受けた場合と受けない場合の贈与税額の比較
贈与を受けた額 | 配偶者控除あり | 配偶者控除なし |
1000万円 | 0 | 283万円 |
2000万円 | 0 | 802万円 |
3000万円 | 283万円 | 1374万円 |
4000万円 | 802万円 | 1974万円 |
5000万円 | 1374万円 | 2621万円 |
※ 贈与税の課税対象となる不動産の評価は、相続税評価額となります(但し、家屋については固定資産評価額に同じ)。相続税評価額には、「路線価方式」(路線価図をもとに算出)と「倍率方式」(固定資産評価額に一定の倍率をかけて算出)の二つがありますが、都市部の宅地は「路線価方式」になります。
なお、路線価は税務署に備え置く路線価図で、固定資産評価額は市町村の資産税課(東京23区は都税事務所)でわかります。
申告
贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに、贈与を受けた方の住所地を所轄する税務署に申告して納めます。納める税額が無い場合でも、申告の必要があります。
贈与税の申告に必要な書類
- 贈与の日から10日以上経過した日以後に作成された戸籍謄本及び戸籍の附票(→婚姻期間等を証明)
- 居住用に使用した後に作成された住民票
- 贈与を受けた不動産の登記簿謄本
- 相続税評価額の分かる書類(家屋は固定資産評価証明書、土地は路線価などで評価した明細表・公図・地籍測量図など)
その他
財産の贈与は、現金より不動産が有利
現金の贈与は、その金額がそのまま100%で評価されますが、不動産として贈与すれば相続税評価額となります。相続税評価額は、建築費や購入価額の60から80%位ですから、土地・建物として贈与する方が有利です。
財産の贈与は、土地と家屋のどちらがよいか?
家屋は、年々評価が下がり、また将来取り壊されることもあり得るので、家屋のみの贈与はお薦めできません。
不動産取得税などは、通常、土地と家屋を一緒に贈与した方が軽減制度の適用があり安く なります。
また将来、居住用不動産売却の可能性がある場合、土地も家屋も共有であれば、譲渡所得税につき「居住用不動産譲渡の3000万円特別控除」の適用が二人分(合計6000万円)受けられるので、売却益が3000万円を超える方は、この点も考慮して土地と家屋両方の贈与が良いでしょう。
贈与後3年以内の相続開始
一般の贈与の場合には、贈与後3年以内に相続が開始した場合、その贈与された価格を相続の課税価格に加算し、支払った贈与税を控除して再計算されます。
一方、配偶者控除を適用した場合の贈与ではその価格は相続課税対象とみなされません。
(相続が贈与と同年に開始し、贈与税の申告前であっても相続財産として再計算することはできません。)
贈与と相続
--相続財産が相続税の基礎控除以下の場合--
贈与税の配偶者控除は、相続税対策の一つの手段です。
従って、将来の死亡時の相続財産が相続税の基礎控除(5000万円+ (1000万円×法定相続人の数))以下のときは相続税がかかりませんので、生前に財産を配偶者に移しておく特段の理由(親子・兄弟間が不仲であらかじめ少しでも配偶者に財産を譲っておきたい等)が無ければ配偶者控除の特例を使う必要は無いかもしれません。
土地・建物の移転登記の登録免許税は、贈与の場合、課税価格の2%ですが、相続の場合は0.2%ですので、相続の方が登記費用は安く上がります。また、贈与税の配偶者控除は、申告する必要がありますが、相続の場合、相続税がかからなければ(税務署からの問合せが無ければ)申告は必要ありません。
以上のことをよくご検討の上、ご判断くださいませ。