老後の住居と生活・介護費用の確保のための施策、いわゆる「老後対策」「老い支度」にはさまざまな選択肢がありますが、「リースバック」もその一つです。
そこで今回は、リースバックとはどんな仕組みなのか、老後対策・老い支度として活用するメリットに加え、デメリット・リスクについてもご紹介します。
一般的なリースバックを説明するWEBサイト・パンフレット等ではあまり紹介されていないメリット・デメリット・リスクもございますので、老後対策の施策の検討の際に、是非ご参考にしてください。
リースバックとは?
「リースバック」とは、自宅を売却した後、その買主と賃貸契約を交わすことにより、売却後も引き続き賃料を払って住み続ける仕組みのことを指します。
リースバックをすることにより、売却後もそのまま自宅に住み続けることができるので、理論上、生活環境を変えることなく、自宅売却によるまとまった資金を調達できることになります。
老後対策としてリースバックを活用するメリット
(1)自宅売却後も住み続けることができる
高齢者にとっては、長年慣れ親しんだ思い入れのある自宅を手放すことは、大変重大な決心が必要であり、なかなか決断することが難しいです。
しかし、リースバックを活用することで、生活環境を変えることなく、また、引越しの手間やコストをかけることなく、そのまま自宅に住み続けられますので、とても心理的なハードルは下がると言えるでしょう。
(2)まとまった資金を手にできる
市場価格よりは低い金額にはなりますが、自宅の売却代金が手に入りますので、将来施設入所等が必要になった場合にも、入所一時金の支払いがスムーズにできます。また、既に売却が済んでいますから、賃貸物件としての自宅の引き払い(退去手続き)も比較的スムーズにできるでしょう。
(3)将来の判断能力低下による自宅売却不能のリスクを回避できる
このまま何もせずに自宅に住み続けた場合、将来、認知症などを理由に施設入所せざるを得なくなった際、空き家となる自宅を売却して、売却代金を介護費用・施設利用料に充てたいというタイミングが来るかもしれません。
その時に、判断能力が著しく低下していると、自らが売主として自宅を売却できなくなるリスクがあります。
そのために、元気なうちから「家族信託」を実行する方が増えているという実情がありますが、リースバックをしておくと、現時点で自宅の売却を済ませることになりますので、自宅売却不能(いわゆる“資産凍結”)のリスクを回避できると言えます。
(4)天変地異による所有不動産の損傷・資産価値減少リスクを回避できる
地震、落雷、大雨、洪水、竜巻などの災害、いわゆる天変地異(てんぺんちい)により、所有する自宅が損傷を受けると、資産価値が大きく損なわれるリスクがあります。いざ売却しようとしても時価評価が大きく下がってしまうことがあるかもしれません。
また、損傷した自宅については、当然自分で補修・修繕をしなければなりません。
リースバックを活用すれば、自宅は所有不動産ではなくなりますので、資産価値が損なわれるリスクを回避できますし、貸主(リースバック業者)に修繕を要求することができます。
老後対策として活用するデメリット・リスク
(1)売却価格が市場の相場よりも下がってしまう
リースバックは、自宅売却と同時に買主となる不動産業者から賃借することになりますので、リースバックのサービスを提供している不動産業者にしか売却することはできません。
この場合、一般的な市場価格よりも2~3割程度安く売却することになりますので、当然、通常の売却に比べ、手取り額が少なくなります。
(2)毎月、割高の家賃がかかる
自宅を所有しなくなりますので、固定資産税や修繕費の負担はなくなりますが、その反面、リースバック業者(買主)に家賃を支払わなければなりません。
しかも、その家賃は近隣の家賃相場よりも高額になる傾向があります(年間家賃は売却価格の10%と設定されることも多いようです)。
したがいまして、まとまった売却代金を手にできるとは言え、毎月の住居費に関する支出は増えることになりますので注意が必要です。
(3)無期限に住み続けられるとは限らない
リースバック業者と交わす賃貸借契約については、契約期間の更新がスムーズにできる通常の賃貸借契約の場合と退去期日が定められた「定期借家契約」とがあります。
後者の「定期借家契約」の場合は、貸主が応じてくれれば、再度「定期借家契約」を交わし直すことはできますが、貸主には再契約を応じる義務はありませんので、再契約を拒絶されれば、退去・引越しをしなければならなくなります。
つまり、リースバックを実行したからと言って、必ずしも無期限で住み続けられるとは限らないのです。
(4)“長寿リスク”がある
リースバックを実行後、そのまま元気に長生きをして自宅に住み続けられた場合、大局的見れば、市場価格よりも安い価格で自宅を売り、市場価格よりも高い賃料相場で自宅を借り続けるという、経済的に非効率な生活を続けていたことになりかねません。
結果として、自宅の売却代金を含む預貯金が家賃等の長期的な支出により底を尽きてしまうリスクがあると言えます。
最終的には、家賃の安い住居に転居することを余儀なくされることもありますので、ご自身が想定していた以上に元気に長生きできた場合に生じる経済的なリスクについても認識をしておく必要があるでしょう。
上記のように、リースバックには、メリットもありますが、デメリット・リスクもありますので、これらをしっかりと認識をした上で、リースバックをすべきかをじっくりと検討する必要があります。
また、リースバック業者には、悪質ともとれる不動産業者もいるようですので、複数の業者から話を聞いたり、セカンドピニオン(客観的な立場からリースバック業者の提案について合理性・適切性についてのコメント)をもらうことも大切です。
リースバックを選択肢の一つとして検討する場合には、まずは、自宅を売却するといくらくらいで売れるのか、3社くらいに無料の時価査定を依頼して、具体的な時価相場額を把握しておくことが重要です(不動産の一括見積サイトはあまりお勧めできませんが)。
その上で、複数のリースバック業者の提示する買取額と賃料について、しっかりと比較・検討することが重要です。
以上、今回はリースバックとはどんな仕組みなのか、老後対策・老い支度として活用するメリット・デメリット・リスクについてもご紹介しました。
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