成年後見(法定後見・任意後見)、高齢者等の財産管理

死後事務委任契約とは

6月 19, 2009

HM081_L「死後事務委任契約」とは、委任者(本人)が受任者に対して、自己の死後の葬儀や埋葬等に関する事務についての代理権を付与して、自己の死後の事務を委託する委任契約をいいます。
あくまで“事務手続き”になりますので、財産の承継(誰に相続させるか)等の指定は、遺言書の中で指定しなければならないことになります。
また、遺言書の中で死後事務委任的条項を記載すること(祭祀の主宰者を指定したり、遺言執行者に葬儀や法要等に関する事項を託したり、付言で希望を表明したり…等)自体は理論的に可能ですが、一般的に遺言書が開示されるのは、葬儀・納骨等の法事がひと通り落ち着いたらというケースが多いので、これでは委任者の意図が確実に実現されない可能性が高くなります。

そこで、遺言書では対応できない事項を網羅し、本人の死亡した瞬間から対応できるようにするためにする契約が、この死後事務委任契約なのです。
委任契約は、原則、委任者の死亡によって終了します(民法第653条)。
しかし、委任契約の当事者である委任者と受任者は、「委任者の死亡によっても契約を終了させない」という合意をすることができますので、この合意を前提とした委任契約であるという点が死後事務委任契約の大きな特徴です。

これにより、委任者は、遺言書で網羅できない急を要する死後の事務を信頼できる第三者に予め任せておけるので、死亡時の備えとして安心です。
よくあるケースとしては、一人暮らしの高齢者が、自分の死んだ後に遠方に住む子供や孫、遠縁の親戚、大家さん、ご近所の方々に手間や迷惑をかけることなく、ひっそりと葬儀を済ませ身辺整理をしたいというケースです。もちろん、身寄りのいない方からのご相談も多いです。

代表的な死後事務の内容は、以下の通りになります。
(A)遺体の引き取り
(B)家族・親族、親友、関係者等への死亡した旨の連絡事務
(C)葬儀、火葬、埋葬、納骨、永代供養等に関する事務
(D)生活用品・家財道具等の遺品(動産類一式)の整理・処分に関する事務
(E)貸借物件の退去明渡し、敷金・入居一時金等の精算事務
(F)生前に発生した未払い債務(入院・入所費用の精算)の弁済
(G)相続人・利害関係人等への遺品・相続財産の引継事務

上記の事務を、自分の希望通りに実行してもらえるように、より具体的に契約書で決めておくことになります。

受任者は、この委任契約に基づき、次のような具体的事務作業をすることになります。
a)死亡時の連絡リストの作成(家族、親族、恩人、親友、知人、大家さん…等)
b)葬儀社と葬儀方法・葬儀プラン等の打合せ及び生前契約
c)喪主を誰にするか等の検討
d)菩提寺(教会)への事前確認
e)墓地管理者への事前確認
(納骨の可否、管理料の支払状況等)
f)永代供養料の支払いの要否や金額の確認
g)家財道具等の中から誰かに承継してほしい物、廃棄処分すべき物の選別

遺言書は、「死んでも大した遺産を残せないから」との理由で作成しない方もいますが、死後事務委任契約は、財産の有無にかかわらず、どんな方でも関係してくる問題です。
安心して死後事務を任せられる家族・親族等がいれば問題ありませんが、核家族化・親族関係の希薄化が進んでいる今日においては、潜在的な需要も含めて、大きな需要があると現場を通して感じています。

可能であれば、「任意後見契約」「見守り契約」「遺言書」を含めた4点セットで一緒にご検討されることをお勧めします。
ただし、最初から4点セットで検討するのは、ハードルがかなり高いかもしれません。
その場合、一般的に検討する順番としては、1.「遺言書」 2.「任意後見契約」と「見守り契約」 3.「死後事務委任契約」の順でよろしいかと思います。

大切なことは、“ご自身の漠然とした不安を解消すること”、それから“自分亡き後のトラブル発生を可能な限り防ぐこと”です。
この2点を実現するための最善・最良の方法がこの4点セットだと認識して頂ければと思います。

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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