成年後見(法定後見・任意後見)、高齢者等の財産管理

経験と統計データから見る成年後見制度の誤解と現状

先月(令和4年3月)、最高裁判所事務総局家庭局より、昨年1年間(令和3年1月1日から12月31日まで)における、全国の家庭裁判所の成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の処理状況について発表がされました。

※ 『成年後見関係事件の概況』はこちら↓↓↓
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/20220316koukengaikyou-r3.pdf

 

それによりますと、法定後見人の選任申立て事件(後見開始・保佐開始・補助開始の審判申立て)に関し、司法書士、弁護士、社会福祉士など親族以外の専門職が成年後見人等の候補者として申立書に記載されている割合が75%を超えている実態が分かります。

それだけ、少子化・核家族化が進んでいることなどを原因として、家族・親族内の後見人の担い手が少ないと言えるでしょう。

その中には、そもそも身寄りがないケースもあれば、支え手となる家族・親族がいても、家族の負担が大きくなるのを避けるため、敢えて家族・親族が候補者に敢えてならないケースも多いことでしょう。

 

その一方で、家族・親族を後見人候補者として記載して申し立てた事案では、およそ80%超の事件で親族の後見人就任が認められているという統計結果になっております。

以前、親族が後見人候補者として記載して申し立てても、家庭裁判所が親族後見人の選任を避け、職業後見人を選任するケースが多く見受けられ、社会的にも批判が出ていましたが、近年の傾向としては、そのようなケースは減っていることが分かります。

今でも、法定後見を回避する理由として、必ずしも親族の後見人候補者が選任されるとは限らないという事情が言われています。

 

しかし、実態としては、本人の家族(推定相続人)の関係が円満であり、親族の後見人候補者が就任することについて家族全員が納得・同意していれば、なおかつ、後見人候補者が失業中だとか経済的に困窮しているとか、本人からの借金があるとか、特別に考慮すべき事情も無ければ、親族の後見人候補者が家庭裁判所から選任される可能性が高いと言えます。

もちろん、成年後見制度を利用することに伴う「事務の負担(定期報告義務)」「経済的負担(後見監督人が就けられた場合の監督人報酬など)」、後見人としての「アクションの制約(不動産の建替えや銀行借入を活用した不動産購入、余剰金銭を有価証券に運用することなどはできない可能性がある)」については、本人及び家族にとって大きなリスク要因となり得ることは、成年後見制度の利用を検討する段階できちんと検証する必要があります。

 

【成年後見制度を利用する動機・きっかけ】
法定後見及び任意後見の開始に関する申立ての動機としては、「預貯金等の管理・解約」が最も多くなっています。
つまり、多くの家庭で、親の預貯金が凍結して困ってしまう事態が起きていることがうかがえます。

その次に多い動機が、「身上保護」(本人の入院・入所手続きなど)となっていますが、本来は、家族・親族関係が円満であれば、後見人に就任して「身上監護権(身上保護権)」の行使を行使しなくても、家族・親族の立場で、入院・入所先の決定から入院・入所契約、医療や介護サービス等の契約をできるというのが実務上の対応です。

したがいまして、ここでも、本人の家族(推定相続人)の関係が円満であり、家族全員が医療・介護方針に納得・同意していれば、成年後見制度を利用して身上監護権を行使する必要があるのかどうかをきちんと見極める必要があります。

成年後見制度に関わる専門職の中には、前述の成年後見制度を利用することのリスク要因や後見制度の必要性について、きちんとお客様に説明し、検証しないで、安易に後見申立て手続きを受任をしてしまうケースや、老親に判断能力の著しい低下や喪失が見られたらすぐに後見制度の利用を促すケースも散見されております。

認知症や大病、事故等で判断能力の低下や喪失が見られたからと言って、今すぐ成年後見制度を利用すべき方とそうでない方(後見制度を使わずとも本人も家族も幸せに暮らせる方)がいますので、その点も、成年後見制度の実務に本当に精通した法律専門職にご相談をしていただきたいです。

 

もっとも、今まだお元気な高齢者については、元気なうちに将来への備え(これを「老い支度」と言ったりします。)をすることはとても重要です。

具体的には、後見申立ての一番の動機となった預金凍結リスクをどのように回避するか、あるいは、老後の生活・介護資金をどのように捻出するか、このまま何の対策も講じなくても認知症や大病・相続などで自分自身や家族が困ることは無いのか、などを家族とその分野の専門家を交えてきちんと検証することこそ、安心の老後に向けた最大の備えとなります。

※ 参考となる弊所ホームページの記事はこちら ↓↓↓ 
 家族信託など老親の認知症による‶預金凍結”対策のまとめ

 

老い支度についてのご相談や安心の老後生活の実現、その先の円満円滑な資産承継への祖内に関するご相談は、家族信託と成年後見に特化した専門職である司法書士宮田総合法務事務所までお気軽にご相談下さいませ!

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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