遺産相続手続・遺産整理・遺言執行

相続放棄のメリット・デメリット

10月 24, 2023

人が亡くなったときに、その相続人が故人(被相続人)の遺産を相続したくない場合は、「相続放棄」という手段があります。
相続放棄とは、家庭裁判所の厳格な手続きを踏むことで、被相続人の財産を受け取る権利(相続権)を放棄し、相続人としての立場から脱退する手続きのことを言います。
相続放棄が家庭裁判所で認められると、その相続人は「初めから相続人ではなかった」ことになります。
この相続放棄には、メリットと共にリスク・デメリットもありますので、しっかりと検討の上、慎重に判断することが重要となります。

本稿では、相続放棄のメリット・デメリットについて分かりやすくまとめて解説します。

1.相続放棄を行うことのメリット

債務を弁済せずに済む

被相続人が多額の債務(借金)を残して死亡した場合、相続人はその債務の返済義務を引き継ぐことになります。
しかし、相続放棄をすることで、債務の返済義務から確定的に逃れることができます。

ほしくない遺産を引き継がなくて済む

遺産といっても、必ずしもありがたいものばかりであるとは限りません。
特に、資産価値が乏しい上に換金性の悪い財産、例えば地方の山林や原野、田畑などは、不動産を「負動産」や「腐動産」という当て字を使って厄介な遺産であることをイメージすることもあるくらい、所有すること自体が負担・リスクとなるケースが増えています。
このような使い道のない不動産を相続すると、毎年固定資産税を支払ったり、除草・樹木の伐採を依頼する費用など、維持・管理コストが継続的に発生することもリスクとなります。
相続放棄をすれば、これらの負の遺産を引き継がなくて良いことになります。

相続人間の煩わしい協議から離脱できる

冒頭のご説明のとおり、相続放棄をすると、最初から法定相続人ではなかったことになりますので、遺産分割協議に参加することがなくなります。
したがいまして、他の相続人と煩わしい・ストレスフルな話合いにかかわったり、遺産を巡る紛争に巻き込まれることを回避できることもメリットになり得ます。

事前の準備で受け取れる財産を作ることができる

相続放棄をした相続人であっても、受取人として指定された生命保険(死亡保険金)は受け取ることができます。
また、被相続人の生前に贈与を受けていた財産にも全く影響しません(相続時精算課税制度を利用したとしても同様です)。
つまり、生前にしっかりと対策を講じておくことで、相続放棄はしても、その相続人に財産を遺すことも可能となります。

 

2.相続放棄をすることのリスク・デメリット

プラスの財産を受け取ることができない

相続放棄をすると、故人の債務から逃れることができる反面、被相続人のプラスの財産(不動産、現預金、有価証券、債権、貴金属など)も一切受け取ることはできなくなります。
唯一、財産的価値のない形見(被相続人が愛用していた衣類や雑貨、アルバムなど)を受け取るくらいしかできなくなります。

相続放棄の撤回は原則できない

相続放棄の手続きをすると、原則として、後日において相続放棄を撤回・取消することはできなくなります。
相続放棄した後に、想定していなかったプラスの財産が発見されたとしても、もはや受け取る権利が無いことになります。

他の親族に迷惑がかかる可能性

相続放棄をしたことにより同順位の相続人がいなくなった場合、例えば、被相続人の配偶者と子の全員が相続放棄をした場合、次の順位である被相続人の直系尊属(両親又は祖父母)に相続する権利(相続権)が移ります。
そうすると、直系尊属側も家庭裁判所での相続放棄の手続きをしなければならなくなるかもしれません。
その直系尊属も相続放棄をすると、更に次の順位である被相続人の傍系血族(兄弟姉妹又は甥姪)に相続権が回ってきます。そして、その傍系血族も相続放棄の手続きをしなければならなくなるかもしれません。

つまり、自分たちが相続放棄をすることにより、後順位の親族にも相続を放棄するかどうかの判断と手続きをしてもらう必要が出てくるかもしれませんので、相続放棄をする際には、事前に関係する親族に相続放棄をする意向を伝えておくなど、不意に相続手続きに巻き込んでしまうような事態を避ける心配りも必要となるでしょう。

 

まとめ

以上のように、 実際に相続放棄の手続きをすべきかどうかは、そのメリット・デメリット等をしっかりと理解した上で判断することが必要です。
しかも、原則3ヶ月という日数の制約もありますので、必要に応じて法律専門職のアドバイス等を受けることも選択肢に入れ、早めに検討をすることが重要です。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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