マンション管理に関する諸問題

老朽化マンション建替えの要件緩和の法改正へ

12/10(金)の日本経済新聞朝刊の記事によりますと、政府は分譲マンションの建て替え要件を緩和するために、区分所有法改正の検討に入り、2022年度中にも法相の諮問機関である法制審議会に諮問する方針だとのこと。

現在の区分所有法では、マンションの建て替えには、区分所有者全員で構成する管理組合総会において区分所有者全体の「5分の4」以上の賛同が必要となっており、このハードルの高さが老朽化マンションの減らない要因の一つになっている。

 

政府は、区分所有法を改正して、建て替え要件を緩和することにより建て替えしやすくし、老朽化マンションの増加に歯止めをかけたい意向だ。

具体的には、マンション共用部分の変更や管理組合法人の解散などを決める場合と同じ「4分の3」かそれ以下に引き下げる内容を基本ラインと考えているが、相続発生などを契機に連絡が取れなくなっている「所有者不明」の区分所有者は、一定の条件下で全体の分母から除外する案も出ているようだ。

建て替えのほかにマンションの敷地を一括して不動産会社などに売却して代金を分け合う「敷地売却」という選択肢もある。
この場合は原則、「区分所有者全員の同意」が必要となってしまい、区分所有者の一人でも連絡が取れない事態、あるいは一人でも賛同しない所有者がいると、マンションの建て替え・再開発が事実上不可能になってしまう。

都内のマンションの建て替えにおいては、所有者の合意形成が難航し、検討から着工までに30年以上かかるケースも出てきている。

国土交通省の推計によると2020年末時点のマンション675万戸のうち築40年を超える物件は103万戸あり、これが2040年に405万戸まで膨らむ見通しだ。103万戸のうち、その4分の1程度が都内に集中しているとみられる。

 

建て替えが進まない背景には、建て替え要件が厳し過ぎるというだけではなく、そもそも、大規模修繕計画や建替え等の意思決定をすべき管理組合が機能していないという実態も影響している。
マンションに居住する区分所有者と、賃貸目的で保有する区分所有者との危機意識・関心に大きなギャップがあることもその要因の一つだ。

老朽化マンションの問題は、大規模地震等に備える安全上の観点からも、住みやすい住環境の維持や治安上の観点からも、不動産価値の暴落防止という経済的観点からも、緊急に解決すべき社会問題と言える。
所有者不明不動産の問題や耕作放棄された荒れ農地の問題とともに、老朽化マンションへの効果的な対策の実施が求められる。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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