家族信託 ,

家族信託・民事信託による“遺言信託”とは

6月 5, 2010

民事信託の遺言信託とは「遺言信託」とは、“遺言”において、遺言者(=委託者)が信頼できる者(=受託者)に対し、特定の目的(=信託目的)に従って委託者の指定する財産(=信託財産)を管理・給付・処分する旨を定めることにより設定する信託のことをいいます。

※信託銀行等が広く宣伝している「遺言信託」やWEBサイトで多くの方が解説している「遺言信託」は、法律用語における本来の意味での「遺言信託」ではありませんのでご注意ください。

つまり、信託銀行が言う「遺言信託」及び世間一般でイメージされている「遺言信託」は、≪遺言書作成サービス+遺言書保管サービス+遺言執行サービス≫を総称したいわば“サービス商品名”に過ぎません。サービス商品名の方が一般に普及・認知されてしまっていることが、民事信託の正しい理解を妨げる一つの要因になってしまっているとも言えます。

「遺言代用信託」と同様、病弱、高齢、障害、判断能力低下等により自ら財産管理できない者の生活・扶養・療養等のための“福祉信託”として、成年後見制度と併せた利用も非常に有効です。
また、“後継ぎ遺贈型受益者連続信託”(信託法第91条)を設定することで、個々の事情に即した柔軟な財産管理・資産承継も可能になります。

◆信託行為

委託者の遺言により設定されますので、その遺言は、遺言の要式に従って有効に作成しなければなりません。
なお、遺言信託は、委託者(遺言者)の死亡により効力が発生することになりますので、別段の定めがない限り、遺言者の相続人が委託者の地位を承継しません。

◆メリット

遺言信託も、契約による信託と同様に、多様性に富んだ内容にすることができますので、委託者の死後の家族等のため、遺産の円滑な承継のみならず、長期にわたる遺産の管理・運用・処分・給付等をも設定することが可能です
第二受益者や指図権者を指定する等、受益者連続型を取り入れることで、“親亡き後問題”や“配偶者(伴侶)亡き後問題”にも対処でき、連続的に有効な財産管理や資産運用、円滑な遺産承継を図れます。

◆自筆遺言か公正証書遺言か

遺言は、自筆によるもの(自筆証書遺言)ではなく、公正証書による遺言を作成することをお勧めします。
自筆証書遺言は、形式不備による無効の恐れや、破棄や改ざん、不明確な記載内容によるトラブルの発生のリスクがあります。また、一旦有効に信託が発効しても、遺言に記載された信託目的が抽象的で不明確なために受託者の信託事務遂行に支障をきたす際には、信託の終了・清算をせざるを得ない可能性もあります。
これらを避けるためには、十分に内容を吟味・検討した上で、公正証書遺言で作成しておくべきです。
また、委託者(遺言者)が死亡し相続が発生すると、信託財産は遺留分減殺請求の対象になりますので、遺留分対応も考慮に入れておくことも必要かもしれません。

◆遺言書への記載事項

遺言における信託のための主な記載事項としては、主に下記の1から7が挙げられます。
1.信託財産の特定
2.信託目的
3.信託財産の管理・処分・交付等の方法
4.受益者
5.受託者
6.信託報酬の額又は算定方法
7.帰属権利者

◆遺言信託の具体的な利用例

自分亡き後に遺される大切な方のための財産管理・生活保障に活用できます。
例えば、財産管理が困難な高齢配偶者の生活・介護・療養等の費用の定期的な金銭給付、障害のある子の生活・教育・医療・介護・療養等に係る費用の給付等に効果的に利用できる他、信託終了後(遺された配偶者や障害のある一人っ子等の死亡後)の残余財産の帰属権利者を介護施設等に指定して寄付するというスキームを構築することができますので、“親なき後問題”“配偶者(伴侶)なき後問題” “後継ぎ遺贈問題”を抱える方にも非常に有効です。

 

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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