◆親なき後問題
親の死亡後(あるいは親が病気や認知症で子供の面倒がみれなくなった後)、障がいをもつ子供が遺される場合の財産管理や身上監護をどうするかは、その家族にとって大変切実な問題です。
これをいわゆる「親なき後問題」といいます。
言葉上は「親なき後」となっていますが、問題の根本は、親が死亡した後ではなく、親が元気に生きているうちに、どのような対策をとって、その日に備えるかということが重要となります。
◆配偶者(伴侶)なき後問題
高齢社会のなかで“老老介護”(=老人が老人を介護すること)や“認認介護”(=認知症高齢者が認知症高齢者を介護すること)が珍しくない今日、高齢者夫婦が抱える大きな問題の一つに、自分亡き後に遺される配偶者の財産管理・身上監護の問題があります。
認知症又はその他の障害により判断能力を喪失している場合、もしくはその兆候・可能性がある場合に、在宅か施設入所を問わず、誰が財産管理や生活面のサポートをしてくれるのか、という不安や懸念があります。
これをいわゆる「配偶者(伴侶)亡き後問題」といいます。
任意後見や法定後見の制度を利用することで、これらの問題についてある程度の解決を図ることが可能です。
しかしさらに、成年後見の財産管理制度にはない「柔軟性」と「幅広い選択肢」がある“民事信託制度”を活用・併用することで、委託者(親や配偶者)が希望する方法において、財産管理をしつつ、残された配偶者や子の生活・療養・介護等に必要な資金の給付を安定的に確保することを実現できます。
「遺言信託」又は「遺言代用信託」を利用し、さらにはその信託行為の中で「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」の信託スキームを構築することで、個々のニーズに即した柔軟な財産管理・資産承継を図ることが可能になりますので、障害を持った子や高齢配偶者等を慮る委託者にとっては、大変有効な制度といえます。
民事信託の受託者と成年後見人とを同一人物がなることも問題ありませんが、場合によっては、受託者と後見人を併用することで、後見人の財産管理の負担を減らしたり、後見人と受託者相互に対する監督機能を持たせたりと、様々な仕組みを構築できると考えられます。