当初から、単独受託者が単独受益者となる信託の設定は、できないという学説があります。
信託法第2条第1項に、『「信託」とは・・・特定の者(←受託者を指す)が一定の目的(専らその者(←受託者を指す)の利益を図る目的を除く。)に従い財産の管理又は処分・・・』とあることから、受託者が自分のために信託財産を管理処分等するというのは信託の本来的目的ではないからです。
ただし、信託設定後、速やかに受益者の変更が想定されている場合(受益権の売買等)は、「委託者=受託者=受益者」という、いわゆる“三者一体信託”も可能です。
また、信託設定時においても、単独の受託者が複数の受益者の一人として信託を設定することは可能ですし、信託開始後に後発的な理由により、単独受託者が複数受益者の一人となることも問題ありません。
では、信託開始後に後発的な理由により単独受託者が単独の受益者(「受託者=100%受益者」)になった場合はどうでしょう?
この場合は、すぐに信託が終了するのではなく、1年という猶予期間が設けられています(いわゆる「1年ルール」)。
つまり、信託法第163条2号により、『受託者が受益権の全部を固有財産で保有する状態が1年間継続したとき』に当該信託は終了するとされています。
(前述のとおり、信託開始後に後発的な理由により、単独受託者が複数受益者の一人となることがあっても、1年ルールは適用されません。)