『空家等対策の推進に関する特別措置法』、いわゆる「空き家対策特別措置法」が先月(2015年5月26日)、 全面施行されました。
倒壊や放火のリスク、不法投棄、不法侵入者の存在、景観を損ねる等の理由で、兼ねてより社会問題化していた空き家問題に対して、行政サイドがいよいよ 動き出しました。
【何が変わるのか?】
この法律の施行により、まず倒壊の恐れや衛生上問題のある空き家(「特定空家」)と認定された建物所有者に対して、 市町村が撤去や修繕を勧告・命令できることになりました。
撤去・修繕などの指導を受けながら改善されない場合、次に勧告が出されます。
この勧告を受けると、特定空家の底地は、固定資産税などの住宅用地特例から除外されます。
つまり、土地の固定資産税は、建物が建っていれば、通常は「住宅用地特例」として土地の固定資産税を更地の場合よりも最大6分の1に優遇する措置を受けられますが、特定空家として勧告を受けると、この住宅用地特例の対象外となり、固定資産税などが最大6倍にまで跳ね上がることになります。
また、命令に違反したら50万円以下の過料に処せられ、行政サイドが所有者の費用負担での強制撤去(行政代執行)することも可能となりました。
なお、命令が出された特定空き家には、その旨の標識が立つことになります。
【ガイドラインについて】
この「空き家対策特別措置法」の全面施行にともない、国土交通省は、「特定空家」の判断基準や 「特定空家」に対する措置の手続きについて、市町村向け指針(ガイドライン)を定めました。
このガイドラインは、市町村が特定空き家と判断し是正措置を講じる際の「一般的な考え方を示すもの」とされています。
そのため、特定空き家の実際の指定や是正措置にあたっては、それぞれの地域の事情に応じて、 市町村が判断規準や手続きを定めることになります。
なお、ガイドラインについては、下記をご参照下さい↓↓↓
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
【特定空き家の判断基準】
「空き家(法では空家等)」とは、「居住等の使用がなされていないことが常態であるもの」を指し、概ね1年間使用実績がない場合に該当します。
このうち、次のどれかに該当する空き家で、市町村から指導・勧告・命令を受けたものを「特定空家」と定義しています。
1.そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(例)
・建物の著しい傾斜
・主要構造部分の損傷
・屋根・外壁・外階段・バルコニーが脱落等の恐れ
2.そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(例)
・吹付け石綿の飛散する可能性
・浄化槽の放置等による汚物の流出・臭気の発生、
・ゴミの放置等による臭気・鼠・ハエ・蚊等の発生
3.適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(例)
・屋根・外壁等への落書きの放置
・不法投棄によるゴミの散乱
・窓ガラスが割れたまま放置
4.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
(例)
・立木がはみ出し歩行者等の通行を妨害
・空き家に住み着いた動物や虫が原因で地域住民の日常生活に支障
・シロアリの大量発生
・門扉や窓ガラスの破損により不特定の者が建物内に侵入できる状態で放置
【どう対処すべきか?】
マスコミや不動産業者等の宣伝に踊らされ、慌てて売ったり、修繕して賃貸に出す必要は無いかもしれません。
ただし、大切なことは、これを一つの契機として、 親や親族が所有している家屋が全く活用されていないで塩漬けになっていること、 あるいは将来塩漬けになるかもしれないリスクについて、その原因(後述します)をきちんと突き詰めて、家族・親族で対応を考えることのきっかけになれば、それはとても良いことですし、問題を先送りにせず、まず家族で真剣に検討することが大切だと考えます。
【空き家となった原因は?】
現在空き家となっている建物は、どうして現状に至ったのでしょうか?
その原因をたどることで、その対処法が見えてきます。
典型的な原因については、下記のものが挙げられます。
(1)共有者間の不仲・確執が表面化し不動産を処分・有効活用できなくなっている、あるいは、共有者が多すぎて意見の統一が既に困難になってしまっている。
(2)所有者たる老親の判断能力の低下・喪失により、もはや不動産の有効活用ができなくっているので、建物を壊して更地にするくらいなら、そのまま放置しておこうという判断。
(3)相続が発生したが、相続人間の遺産分割協議の不調により、遺産たる不動産を処分・有効活用できなくなっている。
【空き家対策とは?】
上記(1)~(3)に陥らないようにするための代表的な対策は、次のものが
考えられます。
①不動産を兄弟姉妹等で共有にしない。
兄弟姉妹間で共有にすると、やがて相続が発生し、各兄弟の持分がその配偶者や子供に分散されて、収拾がつかなくなる可能性がありますので、そのリスクを回避する方策を検討する必要があります。
②病気・事故・認知症になっても生前の財産管理を任せる体制を築く
所有者の判断応力が低下してしまうと、もはや本人による財産管理や契約行為ができなくなり、成年後見制度を利用せざるを得なくなります。
成年後見制度の利用の下では、保有財産の処分・有効活用並びに相続税対策などにつき、かなりの制約を受けてしまいます。
保有財産につき、生前に何をしたいか、何をすべきかという計画次第では、病気・事故・認知症対策として、また成年後見制度の利用を回避するため予め的確な手段を講じておくことが大切です。
③遺言で承継者を指定する
いわゆる“争族”を回避するための常套手段として、遺留分まで
考慮に入れた遺言書を 作成しておくことで、争族による資産の塩漬けを
回避することができます。
上記①~③に関わる手段として、実は『家族信託』が非常に効果的である場合があります。
例えば、上記①については、将来的に相続で子供たちが不動産を共有にしない方策や既に共有になってしまっている不動産の将来的なリスクを回避する手段でも活用できます。
また、上記②については、病気や認知症等になっても、生前の財産管理を万全にする方策として家族信託を活用できるのです。
空き家問題でお悩みの方は、是非一度弊所にご相談下さいませ。