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家族信託を活用すれば認知症後も暦年贈与可能?

4月 30, 2016

『民事信託・家族信託の仕組みを活用することにより、相続税対策としての暦年贈与を、贈与者が認知症等で判断応力喪失後も、受託者主導で着実に実行できるか?』
というご質問をよく頂きますので、この点につきご説明したいと思います。

 

高齢の親が相続税対策を実行するにあたり、その計画途中で本人の判断能力が著しく低下してしまうと、贈与も売買も遺言も任意後見も含め、全ての法律的な行為はできなくなります。

典型的な例として、贈与税の基礎控除である金110万円の範囲内で、毎年父親が子や孫に暦年贈与をしていきたいと考えている方は少なくありません。
しかし実際は、複数年での中期的な贈与計画の途中で父親本人が認知症を発症してしまい、暦年贈与がストップしてしまう事態は少なくありません。

成年後見人になれるのは誰ですか?

そこで、父親の元気なときの意思を尊重して、判断能力喪失後もその意を汲んで財産の管理・処分ができる『信託』、特に『家族信託』という仕組みなら、財産管理を担う受託者主導で、引き続き暦年贈与が完遂できるのではないかと考える方がいます。

つまり、『受益者たる父親の判断能力の有無を問わず、受託者が受託者単独の判断で、信託財産から直接受贈者たる子や孫に毎年贈与としての財産を渡すことができるのではないか』という考え方です。

 

しかし、この考えは非常に危険です!

 

財産管理を担う家族信託の『受託者』は、“受益者のため”にのみ財産の管理・処分をすべき立場ですので、 受託者が受益者たる父親以外の者に直接信託財産を給付することは、忠実義務(信託法第30条)違反になります。

従いまして、法律的な問題(受託者に対する損失補てん責任)が生じますし、税務的にも税務当局から贈与自体を否認される可能性もあります。

子や孫に受益者たる親の信託財産を給付したい場合(扶養義務に基づく給付を除く)には、子や孫を受益者に加える(子や孫に受益権の一部を渡す)ことが大前提となります。

もし、受益者たる親の判断能力喪失後も暦年贈与を実行するのであれば、『受益者変更権』を駆使したハイレベルな手段を講じる必要があります。

もちろん、この手法も税務的なリスクは伴いますので、税理士さんとも相談しながら計画を遂行することは必要です。
家族信託を活用した暦年贈与の遂行計画についてのご相談は、日本屈指の家族信託・民事信託の相談・組成件数をほこる司法書士宮田総合法務事務所までお気軽にご相談下さいませ。

 

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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