親が持つ「年金受給権」を信託財産として預け、受託者たる子が親に代わって年金を受け取ることができるでしょうか?
その答えは、「NO」となります。
年金を受け取る権利(=「年金受給権」)は、たとえ子であっても譲渡することはできません(厚生年金保険法第41条・国民年金法第24条)。
つまり、年金は親本人の口座でしか受け取ることができないのです。
多くの方が老親の生活・介護を支える費用として年金をあてにしておりますので、親の口座に入ってくる年金を預金凍結させずに、どのように使うかが一つのポイントです。
まず、親が自由に使えるお金として手元に残しておきたい金額(数十万から数百万円)は、年金受取口座に残し、それ以外の余剰金銭は、信託財産として受託者たる子が管理する専用口座に移動しておきます。
こうすることで、親の認知症や大病が起きても、子名義の口座で管理していますので、預金凍結リスクが無く安心が増えます。
老親が自宅で過ごしているうちは、本人又は家族が代理して、銀行のATMで年金受取口座から生活費を下ろすことになるでしょう(本人の理解力が低下した後にATMでお金を下ろすことに後ろめたさを感じる方も多いですが、きちんと親本人のために親のお金を下ろして使うことについて後ろめたく感じる必要は全くありません)。
一方、親が施設に入所する場合は、年金受取口座を施設使用料の引落口座に設定することで、2ヶ月に一度入っている年金が、本人の体調に左右されずに効率よく利用料として消費することができて安心です。
定期的に年金受取口座の残高を記帳して確認し、残高が減ってきた場合は、予め受託者が預かっている信託金銭から補填する対応をすることで万全の対応ができるでしょう。
【厚生年金保険法】
(受給権の保護及び公課の禁止)
第41条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金たる保険給付を受ける権利を 別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。
2 租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢厚生年金については、この限りでない。
【国民年金法】
(受給権の保護)
第24条 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。