高齢の親の財産管理(認知症による資産凍結対策)や円満円滑な資産承継(争族対策)に「家族信託」を活用したコンサルティングをする法律専門士業や民間のコンサルティング会社(以下、「専門職」といいます。)が増えています。
どこに相談・依頼したらいいか迷う方も多いようです。
そこで今回は、家族信託のコンサルティングを専門職に依頼する際の注意点、言い換えれば、こんな士業や民間会社の提案には注意すべきという点をご紹介します。
説明や質問に対する回答が的確でない
経験の浅い専門職やその担当者にありがちなケースです。
家族信託の仕組み、家族信託を実行した後の不動産や金銭の管理実務、成年後見制度との比較、全体の工程とそのスケジュールイメージなどについて、説明があやふやな場合は要注意です。
こちらからの疑問・質問に即座に回答できなかったり、意図的に論点をはぐらかして回答を濁す場合も同様です。
「一事が万事」です。
正式な依頼をした士業や民間会社は、この先も継続的な相談相手になる訳ですから、相談先として本当に信頼できるかを見極めましょう。
専門職側の作業日数がかかりすぎる
家族信託の実行には、「家族会議」を何度も開催していただき、そこに法律専門職等が同席しながら取るべき施策や家族信託の設計、契約条項の推敲を重ねていく作業が伴います。
したがいまして、家族会議のための家族間の日程調整が手間取ったり、信託口口座を作成予定の金融機関に信託契約書のリーガルチェックを受けるための日数がかかったり、公証役場の準備日数がかかったり・・・等となにかと日数がかかりますので、緊急性が無ければ、一般的には家族信託の実行(信託契約公正証書の作成)まで3~4ヶ月前後かかるイメージです。
ただその一方で、緊急性のある場合は、これらの工程を短縮して、最短で1ヶ月ちょっとの期間で信託契約公正証書の作成まで実行できるケースも少なくありません。
そんな中で、正式な依頼をした専門職が家族信託の設計や信託契約書の条項案の作成に1週間も2週間も日数がかかるというのは、危険です(弊所では、最優先で家族信託の設計や契約書素案の作成に取り組んでおりますので、数日で対応可能です。)。
つまり、依頼をしようとする専門職に対して、全体の工程とそのスケジュールイメージを確認したときに、専門職側の各作業日数が数週間単位で想定されている場合は、その専門職が家族信託のコンサルティング業務の経験が浅く慣れていないか、優先順位の低い片手間的な業務として捉えている可能性があります。
ランニングコストがかかる仕組みの提案
家族信託の実行に伴う費用とは別に、家族信託実行後(信託契約締結後)にランニングコストが発生するケースがあります。
たとえば、専門職が「信託監督人」として家族信託による財産管理の実効性をチェックする体制を取る場合には、月額又は年額の信託監督人報酬が発生します。
ただし、信託監督人は、必ず設置しなければならない訳ではありません。自由設計の中で依頼人家族の要望に応じて設置するかどうかを判断すればいいと考えます。
したがいまして、専門職が必ず信託監督人となることを前提とした設計やシステム利用料として毎月定額の費用が掛かるような仕組みのご提案には要注意です。
専門職への報酬やシステム利用料等の名目でランニングコストが発生するビジネスモデルを導入している専門職は、家族信託の導入コストの安さを前面に出しているところもあるようです。
しかし、総コストの比較では、非常に注意が必要です。
ランニングコストがかかる仕組みについては、導入コストは安く抑えられるように見えても、今後10年以上継続することを想定した場合は、総費用はより高額になることがあり得ます(この先の物価上昇等の理由で、報酬やシステム利用料が値上げされても、途中でこの仕組みをやめることができないという怖さもあります。)。
信託契約書の中でロック(業者を指定)される
信託契約書の中で、当該専門職が提供する金銭管理のシステムを利用することが明記されている契約書や、当該専門職が関係する不動産管理会社に賃貸管理をするように明記され、信託不動産の修繕・売却・建替えの際には、当該専門職が関係する業者に依頼をする旨が明記されている契約書は危険です。
本来は、管理を担う「受託者」たる子側が、自由競争の中で最適な金銭管理の仕組みを模索し、適切な不動産仲介業者・施工業者を選定すべきであり、信託契約書の中で各種業者を決めて指定する必要はありません。
家族のための財産管理ではなく、専門職のための財産管理になっていないか、きちんと検証することも必要です。
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