家族信託 ,

拙著『図解いちばん親切な家族信託の本』の読者からのよくある質問 【その1】

3月 3, 2023

拙著改訂新版 相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本(近代セールス社)が、現在累計で11,000部の発行となっております。
ご購読いただきました皆様には感謝しかございません。

この『家族信託まるわかり読本』は、いわば専門家向けの中上級者向けの本になりますが、今回は、拙著3冊目の図解 いちばん親切な家族信託の本(ナツメ社)のお話です。
こちらの本は、一般の方々から弁護士・司法書士などの法律専門職まで、いわば初級者から上級者まで幅広い読者層の皆様にご好評で、2021年10月の発刊以来、継続的に全国の書店やAmazon等でご購入いただいております。
これは、本当にありがたいことで、著者冥利に尽きます。

昨年から、『図解 いちばん親切な家族信託の本』をお読みになった方からのお問合せも多いですし、弊所にお越しになりご相談いただく方の中には、本書の該当ページを見ながらご質問をいただくケースも少なくありません。
本書の重要な記述や疑問が生じた箇所に付箋を付けていらっしゃる方もよく目にします。
10カ所以上にたくさん付箋が貼ってあるのを見かけると、しっかりと読み込んでいただいているのを実感し、とても嬉しくなります。

今回は、『図解 いちばん親切な家族信託の本』をお読みになった方々から頻繁にご質問いただく内容を2回に分けてご紹介したいと思います。

 

①家族信託の検討開始から実行まで2~4ヵ月かかると書いてあるけど、実際どうなの?

親世代・子世代が一堂に会し(リモートでの参加も含め)、親の老後から将来の資産承継まで話し合う場としての「家族会議」を何度も開いていただくので、一般的には信託契約公正証書の作成まで3ヶ月前後を目安としていただくケースが多いです。
その一方で、家族信託の設計がシンプルな場合や緊急性がある場合(老親の判断能力喪失リスクが高まっている場合)は、家族全員の協力のもと効率よく家族会議での検討を行い、最短で1ヶ月半程度で信託契約締結まで目指すケースもあります。
ご注意いただきたいのは、お客様家族の都合で期間が延びることは仕方ないですが、法律専門職側の都合でスケジュールが延びてしまう事態は避けるべきという点です。よく耳にするのが、家族信託の設計や信託契約書の準備に2週間以上待たされるケースです。
弊所であれば、お客様が希望する最短のスケジュールに合わせますので、ご要望があれば最優先で対応し、数日以内に家族信託の設計や信託契約書素案の準備をすることも可能です。
一方で、家族信託のコンサルティングをメイン業務にしていない司法書士・弁護士・税理士は、通常の登記業務や訴訟業務、税務申告業務の傍らで、その隙間のスケジュールで日程を組もうとしますので、いたずらに数週間待たされることがあります。また、家族信託に精通していない公証役場や金融機関では、信託契約書の精査に1ヶ月以上待たされることもあります。お客様側の都合に関係ないところで1ヶ月以上待たされるということは、単に精査の作業を後回しにされているので(その作業自体に日数が必要となる訳ではないので)、そのような公証役場や金融機関を避けることで、冒頭の最短で1ヵ月半前後の所要日数で契約締結まで完遂することができております。なお、反対に、2~3週間程度の短期間で家族信託を実行できる旨を謳う専門職もいるようですが、「家族会議」で皆が安心納得するプロセスをきちんと踏まないで、委託者・受託者の2者間(老親と一部の子)だけのお打合せだけで安易に実行してしまうことは避けた方がいいでしょう。

 

②受託者の財産管理業務って実際どのくらい大変?

受託者には、「信託不動産の管理」(賃貸物件の管理も含め)と共に「信託金銭の出納管理」が求められます。
受託者が管理する金銭に使途不明金があってはならないのは当然ですが、信託用の預金口座(信託口口座又は信託専用口座)を介して出入金がしっかりと把握できていれば、そして支出に対応する請求書・領収書等もしっかりと保存できていれば、本来は問題ありません
定期的に「貸借対照表」を作成したり「受託者日報」をつけることができれば、それが100点満点かもしれませんが、自分の親の財産管理に100点満点を目指す必要があるとは限りません。この点において、裁判所が関与する財産管理の仕組みである「成年後見制度」において求められる財産管理義務とは異なりますし、ビジネスでやっている「商事信託」の受託者(信託銀行等)に課せられる義務とも異なります。
信託財産から収益が上がる場合には、受益者たる老親の確定申告がスムーズにできるように収支の帳簿管理・資料保存をしっかりと行い、かつ受益者本人も家族も皆が安心・納得できる財産管理が遂行できていればそれで十分でしょう。
そもそも、家族信託を実行する前から、子が実質的に親のアパートや預金の管理を担っているケースも少なくありません。その場合は、家族信託を実行した後も、財産管理のやり方がそれほど大きく変更となる訳ではありませんし、より負担が増えるという訳でもないので安心いただきたいです。

 

③「家族会議」って本当に必須なの?

親の老後を支えるにあたり複数の子がいる場合であれば、受託者を任せる特定の子(たとえば長男)一人だけに過度な負担を強いるのは好ましいとは言えませんし、親亡き後の遺産(信託の残余財産)も、長男だけに遺すというのを勝手に決めてしまうことも、後で紛争が起こりかねないリスクがあります。
結果として、受託者となる一部の子に負担が多くかかる設計になったとしても、またその結果としてその子が多くの財産を手にすることになっても、家族信託の設計を検討するプロセスにおいて、「家族会議」を開いて家族全員(受託者以外の兄弟など)のご理解・ご納得の上で、家族信託の仕組みを実行することができれば、将来の相続発生後における兄弟姉妹間の納得感(家族間の確執・紛争に発展するかどうか)に大きな差が出ると言えます。
家族会議の開催自体は、必須ではありませんが、親子間・兄弟間の関係性が悪い場合などの特別な事情が無い限り、原則として家族会議の中で検討を重ねる姿勢がその後の家族関係や遺産相続の場面で大きな意味を持ってくるものと考えます。

 

以上、今回は、実務的なよくある質問を3つほどご紹介しました。
続きもお楽しみに・・・!

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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