家族信託を活用する際、受託者の財産管理業務の対価として、信託契約書の中で「信託報酬」を設定することができます。
信託報酬を家族内の公平感・納得感を持たせるために上手に利用される方も多く、信託報酬を設けるべきかどうか、設ける場合はどのくらいの金額設定にすべきかというのは、とても重要なポイントとなりす。
そこで今回は、家族信託で信託報酬を設定する際の代表的なポイント・注意点をご紹介します。
〜家族信託で信託報酬を設定する際のポイント・注意点〜
㋐信託報酬で受託者でない他の兄弟との公平感・納得感を持たせる
「受託者」となる子が高齢の親の生涯にわたる財産管理と金銭給付を担うのが家族信託の典型的な活用事例です。
受託者は一人のケースが多いので、子が複数いる場合は、受託者となる子と受託者とならない子との兄弟姉妹間で、老親のサポート・関わり方に差が出ることが起こり得ます。
受託者となる子にかかる責任と負担、言い換えると受託者となる子の親の老後に対する貢献度、これをどのように遺産分配に反映させるかという論点があります。
もちろん、老親を看取った後の残余財産(遺産)の取り分を受託者として財産管理を担った子に多く分配することは、公平性の観点から良策になり得ます。
その一方で、受託者の労に報いる対価として毎月少しずつ受託者に「信託報酬」を支払うことで、結果として受託者として関わった期間の長さに応じて受託者の手取り額が増える形(受託者として長い年月にわたり財産管理・生活サポートを担えば、それだけ信託報酬の累積額が増えるという形)で調整をするという考え方も良策になるでしょう。
つまり、受託者として老親を支える子とそうでない子との貢献度の差を承継財産の多少で調整をすることを考えた場合、公平感・納得感を持たせる機能として信託報酬を上手に活用することもお勧めとなります。
この点につきましては、家族信託の細部を設計する際に、「家族会議」でしっかりと検討しておきたいところです。
㋑信託報酬は「雑所得」として所得税の課税対象になる
信託報酬は原則として「雑所得」として所得税の課税対象になります。
例えば、受託者が給与所得者である場合、信託報酬が年間20万円を超えると所得税の確定申告が必要になるので注意が必要です。
一方、個人事業主など元から確定申告をしている方にとっては、信託報酬をいくらもらっても、雑所得として確定申告書に計上することになります。
例外として、委託者兼受益者たる老親と受託者とが同居するなどして生計を同じくする場合は、受託者がいくらの信託報酬を受領しようとも、所得税の課税にはなりません(その裏返しとして、次の㋒のように、信託報酬を賃貸経営上の経費に計上することもできません)での、その点も頭に入れておくと良いでしょう。
雑所得として所得税の課税対象となることを踏まえ、信託報酬の設定の要否、設定する場合の金額(上限額)について、しっかりと検討したいものです。
㋒管理の実態が伴わない信託報酬については要注意
賃貸不動産を信託財産とする家族信託において、受託者に対する信託報酬は、受益者の確定申告上、賃貸経営上の経費に計上することができます。
家族信託の受託者は、賃貸経営における管理会社と同様の役割を果たし、賃貸人の地位及び権利義務を包括的に引き受けて家賃管理等をすることになりますので、管理会社に対する管理委託報酬と同様に賃貸経営上の必要経費とみなすことができるからです。
ただ、別の見方をすると、受託者が地元の不動産会社に管理委託をし、実際の賃貸経営にはほぼ携わっていない場合は注意が必要です。
受託者として賃貸管理の実態がないにもかかわらず、毎月の賃料収入の10%前後を受託者が信託報酬をもらい、それとは別に管理会社にも管理委託報酬を支払うとなると、受託者に対する信託報酬は、実体を伴わない報酬支払いとして、経費性を否定されるリスクが生じるからです。
やはり、賃貸管理の実態を踏まえつつ、信託報酬の設定の要否、設定する場合の金額(上限額)について、しっかりと検討したいものです。
以上、今回は家族信託で信託報酬を設定する際の代表的なポイント・注意点をご紹介しました。
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