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年末年始は親の老後について「家族会議」を!

年末年始に久しぶりに実家に帰ったら、以前よりも部屋が乱れていた、郵便物や預金通帳などの整理・管理ができなくなっていた、忘れっぽくなり同じ会話を繰り返すことが多くなっていた、料理の手際や味付けが今までと違っていた・・・というような高齢の親の衰えを実感するケースは多いようです。

高齢の親が大病や病気をしてからでは、老親の生活支援・財産管理に支障が出るのはもちろんのこと、将来の相続対策・争族対策ができなくなり、家族で途方に暮れる事態が起こりかねません。

また、老親の判断能力低下が始まってからでは、介護や相続対策の話題を出すのは、ナーバスな話題になりがちですので、親が元気なうちに、親の老後について家族間で話し合っておくことがとても重要です。

 

年末年始は、高齢の親の今後について、親子間・家族間で話し合う絶好の機会です。

そこで今回は、年末年始に「家族会議」で親の老後について話し合う重要なポイントについてご紹介します。

 

≪「家族会議」の重要ポイント≫

1 親が元気なうちに話し合う

親の健康不安が顕在化してきたり、認知症等で判断能力低下が顕著になってきてからでは、親の希望をしっかりと聞き取りることができなくなるかもしれません。

そうなると、親の想いを実現するという「大義」を掲げることができなくなります。

子側の都合・希望が優先されれば、そこに「大義」が生まれず、老親の安心平穏な老後の実現が危ぶまれる上に、将来の争族リスクまでもが生じかねません。

何はともあれ、親が元気なうちに家族で話し合う場を設けることが重要です。「まだ早い」と思うくらいのタイミングで一度「家族会議」を開いておくことをお勧めしております

 

2 老後の話が最優先(老後の先に「相続」がある)

「家族会議」で話し合うべきは、「相続」に関することではありません。

最も大切なことは、これからも老親が憂いを抱えず、安心して生涯を過ごせる環境を目指すことであり、それを支える家族も不安や不満を抱くことなく協力し合える体制を築くことです。

つまり、「家族会議」では、これからの親の「老後」の希望やそれを実現するための老後の資金繰りを最優先の議題として話をすることが重要です。

「相続」の話題は、優先的・積極的にする必要はなく、「老後」についての話合いができた後に、長い老後の先に将来遺せる財産が有れば・・・、という次のステップの話題として、必要に応じて話題にすれば良いでしょう。

 

3 家族全員が同じ情報を共有すべき(情報格差は争族のはじまり)

「家族会議」で話し合う「老後」の議題ですが、その前提として、具体的に次の2つの情報を家族全員で共有することが大切になります。

親の保有資産状況(どのような資産を保有しているか、時価評価はどのくらいか)

親の収支状況(年金収入は? 不動産所得や株の配当は? 毎月いくら支出しているのか?)と将

来の収支予測(施設入所した場合の毎月の支出額の予測など)

 

特別な事情でもない限り、子世代間に情報の格差があると、それが兄弟姉妹間の疑心暗鬼や確執に繋がりかねないので、そこは親側から勇気をもって家族全員に情報公開をすることがお勧めです。

情報公開をしたときに、その財産を狙うような子がいるとすれば、そういう子の存在や争族リスクを事前に認識した上で、安心できる老後と相続の仕組み構築を目指せることになると言えます。したがいまして、情報公開をすることのリスクを考えるよりは、敢えて積極的に情報公開することにより、家族の反応を見ながら、より有効な「老後」と「相続」の備えを目指せるメリットがあると考えます。

 

4 専門家を交えて検討する

「家族会議」で話し合った結果、「老後」とその先の「相続」についての希望と親の資産状況の現状・将来予測を家族で共有できたら、それを実現するための施策(選択肢)を検討したいです。

ただ、年末年始に家族で話し合う「家族会議」に限って言えば、選択肢の検討前の段階までお話が進めば充分と言えるでしょう。

年末年始に家族で話し合ったらそれで終わりにするのではなく、引き続き「家族会議」を開いて、継続的に話し合っていく中で、親の老後の設計・取り得る施策の検討を進めていくことが理想的です。

しかし、ここで気を付けるべきことは、インターネット上には、誤った情報や偏った見解が溢れていることです。

今後、10数年又は数10年と続く財産管理と承継に関する最も重要な検討の場となりますので、インターネットや雑誌・書籍等の情報だけを頼りにするのではなく、「老後」と「相続」に関する法律・税務の実務に精通した法律専門職(※)にきちんとご相談されることをお勧めします。そうしなければ、適切な選択肢の中から検討できないリスク(検討自体が無駄になってしまうリスク)があるからです。

ただし、このご相談については、家族の誰かが代表してその専門家に後日相談するよりも、この分野に精通した専門家が「家族会議」に同席することをお勧めします

「家族会議」で何を話すべきか、どのように会議を進行すべきか、というのは会議の成果を出す上でとても重要な事柄になります。

せっかくご家族が集まってお話合いをする貴重な機会を設けるので、最適な選択肢を効率よく検討できるように、そこに信頼できる法律専門職に同席してもらい、家族会議の進行を担いつつ(議題が脇道に逸れないようにしながら)、その場で生じた疑問・質問にその場で回答する進め方を目指したいです。

 

※「老後」と「相続」に関係する専門家は多岐の分野にわたり存在しますので、ここで相談する相手を間違えると大変なことになります。例えば、介護職の方は老後の生活・介護に関する知識は豊富ですが、法律・税務に詳しい方は少ないです。銀行員は資産運用や遺言書の作成には詳しいですが、成年後見や家族信託に詳しい方は少ないです。生命保険のプランナーは、資産運用や資金繰り、節税策には長けていますが、法的な施策に詳しい方はそれほど多くありません。税理士は相続税申告や相続税対策に詳しい方は多いですが、成年後見や家族信託を含めたに法的手段について幅広い知識を持った方は少ないです。つまり、相談する専門家が得意とする分野以外は、選択肢として情報提供されないリスクが有ります。幅広い知識と豊富な実務経験のある専門家に相談した上で、各分野の専門家にチームとして関わってもらうなど、“餅は餅屋”として複数の専門家の意見を取り入れることも大切な姿勢と言えます。

 

以上のように、年末年始は、高齢の親の今後について、親子間・家族間で話し合う絶好の機会となります。

来たるべき年末年始。

家族団らんでのんびりゆっくりと過ごす中で、少しは真面目な話題も入れて、高齢の親の今後について、しっかりと向き合うきっかけを是非作っていただきたいです。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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