2022年1月29日付の日本経済新聞の記事によりますと、法制審議会の部会が、2025年度の全面実施をめざす司法のデジタル化に向けた民事訴訟法改正の要綱案をまとめた。
改正案の目玉は、原告がインターネットで訴状を出せるようにするというもので、弁護士などの訴訟代理人が提出する場合は、ネット提出が義務化される。
訴状のネット提出は、欧米諸国に比べて10年程度遅れていると言われ、日本でもようやく裁判手続きのIT化が始まったといえる。
これまで民事裁判を起こす際の手続きは、裁判所への持参か郵送による訴状の提出が必須で、申立てに関する手数料は、印紙や郵便切手で支払う必要があった。
民事訴訟法の改正により、訴状の提出はネット上で可能となり、手数料も電子納付が原則となるため、利用者にとっては、利便性が大きくなる。
訴訟が提起された後は、「特別送達」と呼ばれる郵便手続きに代え、裁判所から被告に対してメールなどで通知することができる。
実際に法廷で自分の意見を主張する場面(口頭弁論)においても、法廷への出席に代え、ビデオ会議での出席も可能となるため、訴訟当事者の負担も軽減できる。
ネット提出の全面義務付けについては、高齢者らの訴訟案件に支障が出る恐れがあるとして、見送られたが、弁護士などの訴訟代理人が訴状を提出する際はネット提出が義務化される。
これにより、FAXしか使えなかった高齢の弁護士のが廃業・淘汰が進むこともあるかもしれない。
一部の高齢弁護士の老害もあったので、この際法曹界も若返りを図るいいきっかけになるかもしれない。
訴訟の記録は、電子データで一元管理する仕組みとなり、書面で提出された書類も電子化される。
原告らはパソコンなどを使って閲覧できるようになるので、とても便利になるだろう。
民事訴訟の第一審の審理期間は平均10カ月弱だが、1年以上を要するケースも多いのが実状で、改正案では、訴訟を効率化し、審理期間を6カ月以内にあらかじめ決めて、7カ月以内に判決を言い渡す制度の創設を盛り込んでいる。
【刑事手続きのIT化も】
民事訴訟手続きのIT化に合わせ、刑事訴訟法の改正により、刑事手続きへのIT活化も進む。
法務省は、逮捕や家宅捜索に必要な令状や裁判資料などの書類の電子化に加え、捜査や公判でもデジタル化を進めるとしている。
たとえば、逮捕や家宅捜索に必要な令状をオンラインで請求・発付できたり、起訴状や供述調書などの裁判資料も電子データとして作成・管理できることを目指す。また、現行の刑事訴訟法が供述調書などの書類に求めている「署名押印」は、電子署名などで代替することも検討している。
諸外国と比べても遅れが目立つ刑事手続きのIT化で、捜査や公判についての迅速化や効率化が期待されるが、情報セキュリティーの確保の点などに課題が残る。
法曹界のIT化は、まだまだこれからと言える。