2022年11月19日(土)の日本経済新聞の朝刊によりますと、家賃を滞納したアパートの賃借人の家財を一方的に処分できるとした家賃保証会社の契約条項が適法かどうかが争われた訴訟の上告審判決が、12月12日に言い渡される、という。
一審、二審の結論は分かれており、今回、最高裁がどのような判断を示すか注目される。
この裁判では、住居を借りる際に家賃保証会社と結ぶ契約条項が、消費者利益の保護を定めた消費者契約法に違反するかどうかが主に争われている。
契約条項では、下記の4要件を満たせば物件を明け渡したとみなし、家財を搬出・処分できるとなっている。
①家賃を2カ月以上滞納
②借主と連絡が取れない
③電気や水道などの状況から建物を相当期間使っていない
④客観的に見て再び住む意思がない
原告のNPO法人消費者支援機構関西は、「4要件は建物明け渡しの強制執行などの運用に反し、条項は居住権と適正手続きの保障という2つの重要な権利を侵害している」、「借り主の権利を侵害する実力行使は消費者契約法に反する」と主張している。
これに対し、相手方となる家賃保証会社側は、「4要件を満たせば借り主に明け渡す意思があると合理的に推認できるので『追い出し』に当たらない」と主張し、請求の棄却を求めている。
2019年の一審・大阪地裁判決は、「賃貸借契約が終了していない段階で勝手に荷物を持ち出すのは不法行為に当たる」と認定し、消費者契約法の禁止事項に該当するとして条項の使用差し止めを命じた。
一方の二審・大阪高裁判決は、4要件を満たす状況では借り主が既に住居として使う意思を失っている可能性が高く、「占有権は消滅している」と指摘し、家財処分による借り主の不利益は限定的で、消費者契約法にも反しないとして地裁判決を取り消した。
また、この裁判では、「家賃の滞納が3カ月分以上に達すれば無催告で契約解除できる」とした規定が消費者契約法に反するかどうかも争われているが、これについては、一審、二審とも「違反しない」との判断を示し、NPO法人側の請求を退けている、という。
悪質な貸主がいるのも事実であるが、それにも増して悪質な賃借人がいるのも事実。
家賃を踏みたおしたまま連絡が取れなくなり、家財や衣類を放置するのはもちろんのこと、居室内をゴミ屋敷状態にして行方をくらますというケースの家主(賃貸オーナー)からの相談は少なくない。
悪質な借主の財産と権利をどこまで保護すべきか(保護する必要があるか)は、大きな問題である。
消費者契約法の法理念である“弱者保護”の対象に、果たして悪質な家賃滞納者や行方不明者を加えるべきといえば、市民感覚としては受け入れ難いと言えるだろう。
消費者保護を定めた消費者契約法の理念と抵触しない程度に、貸主側にも現実的にスムーズな対応策が講じれる道を開いてほしい。
最高裁がどのような理論で、どのように結論を下すか、12/12の判決を待ちたい。