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「タワマン節税」を政府が見直し検討へ

11/30付の日本経済新聞の朝刊記事によると、政府・与党は高額なタワーマンションなど不動産を活用した過度な相続税対策(いわゆる“タワマン節税”)を防ぐ検討に入り、2023年度与党税制大綱で今後の検討課題に盛り込むことを目指すという。

相続税の申告に際して行う不動産の評価(不動産の相続税評価額)は、建物と土地と分けて計算することになる。
建物の相続税評価額は、各市区町役場が算出する「固定資産税評価額」となる。
一方の土地の相続税評価は、土地は公示地価(時価相当)の8割程度とされる「路線価」を元に計算する。
この路線価は、実勢価格(実際の取引価格)と大きく乖離し、都心部では実勢価格よりも大幅に評価が下がることも少なくない。

特にタワーマンションでは、相続税評価額が実勢価格よりも大幅に下がることがほとんど。
というのは、比較的広くない敷地面積に対して上に高く伸びる高層マンションでは、相当数の数におよぶ各マンションの部屋に割り当てられる底地の持分がかなり少なくなる。
ゆえに、各戸の相続税評価額は、区分所有建物の「固定資産税評価額」と土地の僅かな持分の「路線価」となるため、実勢価格が高額にもかかわらず、それに比べ相続税評価額が極端に低く評価できることになる。

分譲価格も高額であるが、将来の売却価格も値崩れしない(値上がる可能性もある)都心部・ウォーターフロントのタワーマンションが、相続税の節税に使えると言われるのは、このためだ。

 

近年の不動産価格の高騰を受け、相続税評価額と実勢価格の乖離はより顕著になっている。
約13億8000万円で故人が購入した賃貸マンション2棟の相続税評価が、その4分の1の価格で計算され申告されていた事案につき、評価額が実勢価格より低すぎるとして国税当局が再評価し追徴課税して争っていた裁判で、本年4月には、最高裁判所が「追徴課税は適法」と判断した判決が出ている。

 

国税庁は、評価額と実勢価格との乖離を是正する方策について議論を進めたい考えで、来年に学者や不動産鑑定士、不動産業界を交えた検討会で具体的に検討し、早ければ同年中にも評価方法を定める国税庁の通達を改正する可能性がある。

評価方法は今後詰めることになるが、例えば建物を評価するのに使う倍率を上げたり、近隣地域の取引価格から算定したりするなどの案を検討するとみられるという。

原則としては、建物の固定資産税評価額と土地の路線価を基にする現在の評価手法は今後も残しつつ、実勢価格が評価額を大きく上回る物件を念頭に新たな算定方法を適用する方針のようだ。
実勢価格が評価額をどれだけ上回れば対象とするのか、地域で差を付けるかなども今後検討するようだ。

国税庁は、最高裁判決も踏まえて公平な税負担を求める環境を整えるというが、納税する一般人にとっては、節税策としてどこまで有効で、どこからが否認されるのかの具体的な線引きが見えにくい。
相続税対策の常套手段として広まった”タワマン節税”の方策が今後取りづらくなる可能性は否めないが、来年以降の国税庁の動きに注視したい。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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