1月16日の読売新聞・朝日新聞の朝刊1面の記事によると、人口減を背景に、長期間放置され管理状態が悪い空き家が増え続けていることへの対策を強化するため、国土交通省は「空家対策特別措置法」を改正する方針を固めた、という。
これまで、倒壊する危険や衛生面で有害となる恐れのある空き家については、2015年に施行された「空き家対策特別措置法」において「特定空き家」として、固定資産税の優遇措置を解除したり、修繕や解体の指導・勧告ができる旨が定められた。
今回の改正で、管理が不十分な建物を新たに「管理不全空き家」と規定し、改善の行政指導に従わなければ、固定資産税の優遇措置を解除し、適正管理や有効活用を促す方針とのこと。
今月23日召集の通常国会に改正法案の提出をし、来年度の施行を目指すという。
住宅が建っている土地(宅地)には、固定資産税が6分の1に減額されるなどの優遇措置がある。この優遇措置を受け続けるために、老朽化した空き家であっても、安易に解体して更地にしない所有者は多く、空き家放置の一因とされている。
日本全国には、居住目的のない空き家(別荘や賃貸用などを除く)が約350万戸(2018年のデータ)あるが、これまで市区町村が「特定空き家」として認定したのは約4万戸で、そのうち解体や修繕で対応ができたのは2万戸程度だという。
また、「特定空き家」に至らないまでも、敷地に雑草が繁茂していたり、窓ガラスが割れて治安悪化を招きかねない管理状態の悪い「特定空き家」の予備軍は20万戸以上あると言われている。
国交省によると、空き家は、この20年間で1.9倍に増加し、2030年には470万戸となると推計される。国交省は、改正法の活用により、その数を400万戸程度に抑えることを目標としているようだ。
“放置空き家”の原因とは
“放置空き家”を生む主たる原因は様々であるが、代表的なケースは下記の6つが挙げられる。
①高齢の所有者が入院・入所して自宅に戻る可能性は低いが、本人の判断能力が低下しているので、経済的・事務的負担の多い「成年後見制度」を利用してまで、解体や賃貸、売却することを避けたいケース。
②高齢の所有者が入院・入所して自宅に戻る可能性は低いが、本人の希望で、相続が発生するまで自宅を現状のままにしておくケース。
③家族・親族で共有名義となっており、空き家の活用・処分方針につき、話がまとまらず放置されるケース。
④所有者の相続発生により空き家となったが、遺産相続で揉めて、承継者が定まらないケース。
⑤所有者の相続発生により空き家となったが、固定資産税や庭木の剪定費用など維持管理費がかさむ一方で売れる可能性が低く、誰も相続したがらずに放置される(遺産分割協議も相続登記もしない)ケース。
⑥所有者の相続発生により空き家となったが、誰も相続したがらず、相続人全員が「相続放棄」をして承継者が不在となるケース。
“放置空き家”に対する予防策・善後策とは
前述の①~⑤について、それぞれ“放置空き家”を生まない予防策の一例を簡単に紹介したい。
①高齢の所有者が入院・入所して自宅に戻る可能性は低いが、本人の判断能力が低下しているので、経済的・事務的負担の多い「成年後見制度」を利用してまで、解体や賃貸、売却することを避けたいケース。
⇒【予防策】所有者が元気なうちに、将来の“資産凍結対策”として、「家族信託」で家族に予め管理処分権限を託しておくことや「生前贈与」で元気な配偶者や子の財産にすることで、自宅不動産を適切なタイミングで処分できるようにしておくことは最善の策になり得る。
②高齢の所有者が入院・入所して自宅に戻る可能性は低いが、本人の希望で、相続が発生するまで自宅を現状のままにしておくケース。
⇒【予防策】所有者の希望を叶えることは重要だが、維持管理コストの支払原資やその担い手について、事前にきちんと“家族会議”で話し合っておくことが重要。“家族会議”の結論次第では、上記①の予防策を実行することも。
③家族・親族で共有名義となっており、空き家の活用・処分方針につき、話がまとまらず放置されるケース。
⇒【予防策】共有者間で連絡・連携が取れるうちに(世代交代や共有者間で確執が生まれる前に)早めに処分をするか、「家族信託」の仕組みを活用して、財産は共有状態のまま管理処分権限を親族の一人に集約させ、共有者全員の意見一致や協力が得られなくても処分ができるようにしておく。
④所有者の相続発生により空き家となったが、遺産相続で揉めて、承継者が定まらないケース。
⇒【予防策】相続争いが起きないように、所有者が元気なうちに「遺言」や「家族信託」、「生前贈与」で承継者を指定しておく。
⑤所有者の相続発生により空き家となったが、固定資産税や庭木の剪定費用など維持管理費がかさむ一方で売れる可能性が低く、誰も相続したがらずに放置される(遺産分割協議も相続登記もしない)ケース。
⇒【予防策】所有者が元気なうちに早めに処分を試みる。また、相続発生までに処分できなかった場合に備え、「遺言」や「家族信託」で、当該不動産の承継者を定めておき、ある程度の維持管理費分の金融資産も併せて当該承継者に遺す。
空き家対策は、官民一体の取り組みが急務
上記⑥のケースについては、現行の法制度では限界がある。
たとえば、民法改正や新たな特別法の施行で、相続人不存在となる不動産については、各自治体が「相続財産管理人」の選任申立てをして、スムーズな国庫帰属の手続きを踏めるように、相続放棄をした相続人から各自治体に通知をしてもらいやすい仕組み(あるいは通知義務を課す仕組み)を作ることも良策だろう。
また、「特定空き家」「管理不全空き家」については、相続財産管理人による換価・精算手続きを要せずに国庫や各自治体に簡潔に帰属できるような特例措置を設けることもいいかもしれない。
放置空き家を解消するための予防策・善後策には、各所有者及びその家族の高い危機感と行動力が求められることは間違いないが、併せて新たな法律・税的優遇措置・助成金の実施など行政サイドの引き続きの全面的サポートも急務である。
さらには、各自治体や民間企業、NPO法人などが運営する「空き家バンク」等、空き家を放置しない・空き家を活用するという活動・仕組みを全国津々浦々で展開することも求められる。
上記①~⑤に該当するケースに限らず、空き家対策に関するご相談は、司法書士 宮田総合法務事務所にお気軽にご相談下さいませ。