仕事関係 司法書士のつぶやき

「デジタル遺言制度」の創設に向けて検討開始

5月 8, 2023

5/6付日本経済新聞の1面記事によると、政府は法的効力がある遺言書をインターネット上で作成・保管できる「デジタル遺言」制度の創設をする方針を示した。

法務省が2023年のうちに有識者らで構成する研究会を立ち上げ、2024年3月を目標に新制度の方向性を提言する予定だという。
最終的には、法制審議会の議論を経て民法などの法改正により実現を目指すことになる。

現在の民法が規定する遺言制度は、遺言者が原則として全文を自筆で書き記す「自筆証書遺言」、公証人が関与して作成する「公正証書遺言」、封印した遺言書を公証役場に持参する「秘密証書遺言」の3種類に限られている。
今回新たに、公証人が関与せずに自分のパソコンやスマートフォンで作成した遺言をクラウド上に保管する案が浮上している。

ネット上での作業だけで遺言の作成が可能になれば、フォーマットに従って入力することで、より遺言を作りやすくなり、さらに遺言を作る人が増えることが期待できる。
署名・押印に代わる本人確認手段やブロックチェーン(分散型台帳)の技術を活用して改ざん防止の仕組みを作れば、その信頼性も担保できる。
デジタル社会で、より多くの人が使いやすい遺言制度を導入することで、より多くの円満円滑な相続の実現を狙う。

諸外国でも、紙以外の遺言制度が進んでいる。
アメリカでは、「デジタル遺言」を認める2019年に電子遺言書法が定められ、各州の判断で利用できるようになったという。
また、韓国でも録音の遺言が認められているそうだ。
その一方で、ドイツやフランスでは、「デジタル遺言」や録音での遺言は認められていない。

今後、日本政府は、高度なデジタル技術を駆使した安全性の高く実効性の担保できる制度の導入を目指すようだ。

 

「デジタル遺言」の制度が創設されても、我々法律専門職に対する遺言書作成の相談が劇的に減ることはないと思われる。
というのも、単に遺言書を書けば円満円滑な資産承継が実現できるとは限らないケースが少なくないからだ。

“人生100年時代”といわれる長い長い老後をどう乗り切り、その先の円満円滑な資産承継にどうつなげるか、専門職の知恵・提案力の見せ所の分野だ。
遺言だけではなく、家族信託や任意後見、生前贈与、生命保険の活用など幅広い知識とアイディアで、法律専門職が提案をしていく余地は、まだまだ充分に残っているといえる。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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