2023年6月9日付日本経済新聞朝刊の記事によると、法務大臣の諮問機関である法制審議会は、分譲マンションにおける修繕や建替えなどについて、管理組合の総会における決議要件を緩和する「区分所有法」の改正案についての中間試案を発表した。
「区分所有法」の改正の動きは、現在の老朽マンションの増加を踏まえ、古くなったマンションの修繕や建替えをしやすくし、地域の安全や景観に配慮した街づくりを促す狙いがある。
都市部で1970年以降に大量供給されたマンションについては、老朽化が社会問題となっており、適切な修繕を怠ると外壁がはがれる事故や倒壊といった危険を招きかねない。見た目にも劣化が激しいマンションが増えれば街の景観・イメージを悪くし、町の活性化のマイナス要因になる。
非居住者(自ら居住せず賃貸に出している所有者)が多数を占めるマンションでは、マンション管理(共用部分の大規模修繕やリノベーション)について関心のない所有者も多く、大規模修繕や建替えなど決議要件の厳しい決議は有効に成立させることは困難を極める。
そこで、法制審議会は、マンションの再生・価値向上に向けて、管理組合総会における決議要件の緩和に向けて検討を進めている。
マンションの維持・修繕・改良などの実施に際しては、管理組合総会において、修繕などの決議を行う必要がある。
従来、管理組合総会に欠席する区分所有者は、委任状や議決権行使書による賛意表明がなければ、決議に反対したと取り扱われてしまうため、修繕などを実施する際に必要な厳しい決議要件を満たせず、必要な修繕工事に手を付けることができない事態も起きていいた。
そこで、法制審議会の中間試案では、修繕の決議要件について「出席者過半数」に変更する。
また、エレベーターの設置など建物の構造を変えるような大規模改修に必要な要件も緩める方向で検討している。
さらには、マンションの建替えを決める際の要件を緩め、現在は所有者の5分の4の同意を得なければ決定できないところ、所在不明者を決議の母数から除外するとともに、多数決割合の緩和で2つの案を用意した。
●修繕決議●
【現行】区分所有者の過半数
【改正案】出席者の過半数
●大規模修繕決議●
【現行】区分所有者の4分の3
【改正案】出席者の4分の3など
●建替え決議●
【現行】区分所有者の5分の4
【改正案】
所在不明者を決議の母数から除外した上で、下記の2案が有力
①案:4分の3に引き下げ客観的な理由がある場合は3分の2
②案:現行の5分の4を維持し客観的な理由がある場合は4分の3
また、法制審議会は、海外に住む所有者向けに、代理人による管理制度の創設も中間試案に盛り込んでいる。
裁判所が弁護士や司法書士などを代理人として選任し、管理に支障が出た際の対応をしやすくする。
つまり、本人に代わり代理人が専有部分を管理できるようにすることで、代理人の判断で部屋に工事で立ち入れるようにする。
政府としては、今後も法制審議会を中心に検討を重ね、2024年の通常国会においての提出をめざす。