2024年11月21日付日本経済新聞によりますと、故人のスマホやパソコンに残ったデータやインターネットバンク・インターネット証券へアクセス、SNSアカウントの削除ができず、家族が困るケースが増加しているという。
これらは、「デジタル遺品」と呼ばれ、財産的にプラスのものもあれば、“サブスク” (定期的に定額料金を支払うことで、商品やサービスを自由に繰り返し利用できる仕組み)など早期に解約しなければ、継続的に課金され続けるリスクのあるマイナス資産になり得るものもある。
典型的なトラブル事例は、スマホやパソコンのパスワードが分からず、ロック解除ができないケース。
インターネット上やスマホのアプリの中で管理・保有している資産については、法定相続人であっても簡単にはアクセスできないし、保有資産の情報をすべてパソコン上で管理している方も多いため、保有資産の全貌が把握できず、資産規模によっては相続税の申告・納税がきちんとできないリスクが生じる。
また、電話帳・住所録もパソコンで管理している方も多く、亡くなった旨を親友・知人・仕事関係の方に連絡することすら難しいケースも起こり得る。
デジタル遺品については、家族・他人に知られたくない内容を含む場合もあり、その対策については、一筋縄ではいかない。
国民生活センターが公表しているトラブル対策としては、下記のものが挙げられているようだ。
㋐スマホやパソコンのパスワードを書いた紙を保管する
㋑契約中のサービスのID・パスワードを整理して一覧にまとめておく
㋒必要な情報を「エンディングノート」に残す
㋓自分が亡くなった後にアクセスできる人を生前に指名しておくサービスを利用する
上記㋐㋑は、生前に家族や他人に盗み見られたりして、不正アクセス・情報流失リスクを防ぐ手立てが必要。
上記㋒は、一定程度の年齢になれば準備する方も増えているが、20~60代の年齢層では、「エンディングノート」を残すという発想すらない方も多いだろう。
いずれにせよ、上記㋐㋑㋒でまとまた情報・紙媒体をどのように保管するかは、本人の年齢や生活状況、家族・親族関係などに影響するので、これといった万全の選択肢があるとは言えない。
身寄りのない高齢者などの“お一人様”の場合は、弊所のような法律専門職が「死後事務委任者」として、デジタル遺品の整理・処分も一緒に承ることができるが、家族・親族がいる方やシニア層でない方については、そのような死後事務を法律専門職に依頼することには抵抗も多い。
今後、上記㋓やデジタル遺品の死後処理を担うような民間サービスも増えてくるのではないかと思われる。