先日、『アエラ』 のライターさんから≪家族信託≫についての取材を受けた。
いよいよ『アエラ』でも家族信託の特集が組まれるようになったのだと思うと、家族信託の普及もちょとずつではあるが進んできたことを実感する。
その取材を踏まえ家族信託にも言及された『アエラ』(2017.1.23号)が発売された。
大特集として『親というリスク』をテーマに、超高齢社会におけるいわゆる“長寿リスク”、例えば老親の介護の問題、認知症による資産凍結リスク、実家の空き家の問題等を取り上げている。
記事の中で、『認知症で実家が売れない!』という見出しの記事があり、その中で≪家族信託≫が“円満な相続への切り札”として特集で紹介されている。
ちょっとセンセーショナルで不安をあおるような見出しであるかもしれない。
しかし、高齢者の5人に1人は認知症となる時代に、≪財産凍結回避≫≪相続・争族対策≫の新しい手法・選択肢として、より多くの方に正しく知ってもらう意義はとてつもなく大きいので、敢えてインパクトのあるこのような見出しでもいいのかもしれない。
≪家族信託≫のもっとも典型的な形の一つが、老後の財産管理としての活用策であるので、≪家族信託≫と≪成年後見制度≫はよく比較されるし、成年後見の代用策として≪家族信託≫を説明・提案することも多い。
ここで気を付けなければならないのは、≪成年後見制度≫が不十分な制度で、≪家族信託≫が優れた制度であるという短絡的な議論ではないということ。
認知症が発症しても、事後的に、手間はかかるが成年後見制度を利用すれば、スムーズな自宅売却ができ(預貯金は勿論おろせる)、窮する事態に陥らずに済むケースはある。
したがって、財産管理の面だけを見れば、一概に認知症により大きな不安やリスクが顕在化するとは限らない。
ただ、成年後見制度の趣旨・硬直性を考えると、成年後見制度を使うべき方と使わずに家族信託で代用した方が良い方、あるいは両方の制度を併用した方が良い方がいるのは確かである。
やはり親が元気なうちから備えを始めることで、成年後見以外の選択肢を踏まえて、最適な手段を講じておくことが何よりも重要である。
このアエラの発売を受けて、記事中に記載のある一般社団法人家族信託普及協会への問合せも急増しているようである。
小生が代表理事を務めるこの協会は、一般の方への普及を一つの目的とはしているものの
、専門家に対する情報提供や専門家向け研修によるコンサルティングスキルの向上等を目的とした団体であるので、個々の一般の方からのご質問やご相談には、直接回答することはしていない(弁護士法との絡みもあるので)。
具体的な相談案件については、全国にいる信頼できる同協会の会員を紹介している。
(一社)家族信託普及協会としては、『認知症になったら自宅が売れなくなり窮する。だからそうならないように≪家族信託≫するしかない!』ということを言いたいのではない。
成年後見制度を批判するつもりも、否定するつもりもなく、あくまで≪成年後見制度≫以外の選択肢として≪家族信託≫を理解され、比較検討される方がもっともっと増えることを望む。
そして、その検討過程において、“家族会議”を開催し、老親の要望を踏まえ、今後の問題(介護・財産管理・実家のいく末・相続後の遺産分割など)をじっくり話し合うことが、何よりも重要である。
最終的には、全国民が成年後見と家族信託とを比較検討し、上手に使い分け、ときには併用することで、“想い”を形にできること、その結果争族が減り、円満円滑な財産管理と資産承継が増大することを望みます・・・。