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税理士が『家族信託』に取り組むべき5つの理由

12月 10, 2018

税務コンサルティングの必要性と家族信託

月次決算と年1回の決算申告を主たる業務とする記帳代行・申告業務は、低価格化の一途をたどり、それだけでは将来的に先細りの業務となりかねないため、この先を見据えた、クライアント(会社社長、事業経営者、賃貸不動産オーナー、地主、資産家等)への「税務コンサルティング」という付加価値サービスを提供することは、税理士の生き残りをかけた競争の中では必須と言えるでしょう。
「税務コンサルティング」と一言で言っても、その内容は多岐にわたります。
企業の税務顧問に関しては、法人税・個人の所得税の節税対策はもちろん、株価対策も踏まえた事業再編・事業承継や株主対策(分散した株をどのように整理し経営を安定化させるか)などの問題解決へのアプローチがあるでしょう。
個人の資産税関係では、所得税・相続税対策の一環として、生前贈与、生前売買、資産の組換え、法人化、生命保険の活用などの施策が考えられます。
これらのコンサルティングに基づく計画遂行の一助になる、あるいは前提となる施策が「家族信託」です。

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税理士が取り組むべき5つの理由
「家族信託」自体税務的な評価減・税額圧縮の効果がないことから、積極的に「家族信託」を学ぶ税理士は多くはありません。それでも、税理士が「税務コンサルティング」を業務の中核の一つに見据える場合には、「家族信託」を適切に理解し、クライアントへの提案に織り交ぜることは必須と言えます。
ここでは、税理士が「家族信託」に取り組むべき理由として5つお話したいと思います。

 

①コンサルティングに基づく各施策の頓挫リスクを回避
高齢の会社経営者・大株主・事業経営者・不動産オーナー等のクライアントに対して、様々な節税対策・事業承継対策の提案・実行していく際に、その施策が頓挫するリスクを常に考える必要があります。つまり、会社の大株主が認知症を罹患してしまうと、適法に株主総会を開催して決算承認決議等ができなくなりますし、数年以上かけて実行中の計画が途中で頓挫して、未遂に終わるケースも少なくありません。
特に60代以上のクライアントに対する税務コンサルティングを遂行するならば、まずリスク対策の一つとして「家族信託」を提案して、各施策の実効性を担保することは欠かせないでしょう。

 

②事業承継対策における主たる選択肢の一つ
円満かつ円滑に事業承継を計画・実行することは、膨大な労力・コストを要する可能性があります。
その業種・業態、経営者交代・経営権移譲のタイミング、経営状況と今後の業績見通し、所要期間、手法、後継者の有無、後継者が身内かそうでないか・・・など、様々な要因により画一的な対策はあり得ません。
そこには、財務・税務・法務・労務・人事等の見地からアプローチが必要で、それぞれの専門職のサポート抜きには事を進めることはできないかもしれません。
その中でも、税務と法務を絡めた事業承継の典型的な施策が、種類株式(無議決権株式や拒否権付株式、買取請求権付株式など)の導入、事業承継税制の活用と言えますが、その中で最有力な施策の一つが、「信託」という仕組みです。
株価が引くうちに財産権としての株式を後継者に渡しておくが、一方で経営権(=株主総会で議決権を行使する権限)は、まだ現経営者側が保持し続けたい場合に、『自己信託』という施策が効果的である場合があります。
所有権財産としての株式を後継候補者に生前から渡してしまうと、もしその後継候補者が後継者としての資質が無く後継者にならなくなった場合や後継候補者が急死してしまった場合に、当該死亡者の相続人に株式という財産が流失してしまうリスクが残ります。これも、「信託」という仕組みの中でリスクヘッジできるのも魅力の一つです。

 

③長期にわたりクライアントをグリップ
クライアントへの様々な施策の提案・実行に際して、計画頓挫リスク対策として「家族信託」を実行した場合、「家族信託」の設計にもよりますが、少なくともクライアント個人(受益者)の死亡まで信託契約が継続するケースが多いです。ご家族構成やニーズによっては、世代を跨いで何十年と継続する信託契約を実行することもあります。
そうなりますと、各施策の完遂にとどまらず信託契約が存続する限り、信託税務への対応を含め、事情をよく知る税理士が長期にわたり継続的な税務顧問を任される可能性は高いといえるでしょう。

 

④後継者によるリプレース(顧問契約打切り)対策
先代が亡くなり、2代目社長に交代したタイミングで顧問税理士が取り換えられる(リプレースされる)という話は、どこにでもあります。つまり、顧問税理士として、後継者となる子世代との信頼関係を万全に築き、円滑な引継ぎがなされているケースはそう多くはありません。
「家族信託」は、高齢のクライアントの財産を後継者たる子世代が受託者として管理処分権限をもらうのが典型的な活用の仕組みとなりますから、当然に顧問税理士として後継者たる子世代との顔合わせ、打合せが不可欠となります。顧問税理士が現クライアントとその後継者(次期クライアント)とを交えた中で「税務コンサルティング」を実行できれば、3者間での信頼関係は強固なものとなります。

 

⑤クライアントの家族・親族もグリップし更なる業務拡大
前述の通り、「家族信託」の検討・設計において、クライアント個人とだけお打合せをしても話は進みません。クライアントの家族(夫婦とその子世代)全員を当事者とする「家族会議」を招集して、その中で議論を重ねることが重要です。「家族会議」では、クライアント(老親)本人の希望・想いを家族内でシェアするだけではなく、老親の保有資産や毎月の収支状況もできる限りオープンにしてもらっております。そして、それを受けて、老親を支える子側の希望・想い・覚悟も表明してもらいます。
このプロセスを踏むことで、家族内の微妙なわだかまりや不信感、将来への不安等をできる限り払しょくして、家族全員が資産承継に理解と納得をして、老親の老後とその先の将来に明るく向き合うことができるようになります。
この「家族会議」の場に、顧問税理士として家族信託に精通した法律職と一緒に同席することで、これまでの税務顧問としての立場に加え、クライアント家族全員から信頼される存在になる可能性は高いといえます。
もちろん、この「家族会議」に同席して、家族内の意見を調整し、“想い”のベクトルを合わせるお手伝いには、それなりのスキルが必要になることは確かです、つまり、クライアント家族それぞれの方の将来ビジョン・人生観までも踏み込んで掌握するためには、信頼されることは勿論のこと、税理士本職又は会計事務所の担当者のコミュニケーション能力・ヒアリング能力が問われることになるでしょう。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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