成年後見(法定後見・任意後見)、高齢者等の財産管理

親族が後見人に就任する際の注意事項(禁止事項)

11月 17, 2009

親族が後見人に就任する際の注意事項は、下記のとおりです。
下記の禁止事項・注意事項に抵触した場合、家庭裁判所から解任される可能性もありますのでご注意ください。

1.無断借用・使い込み・流用の禁止
⇒業務上横領罪という刑法犯罪の対象となりますので、絶対的にできません。例え、すぐに返却したとしても、借用行為が許されることにはなりません。

2.虚偽の名目による支出、過大な支出の禁止
⇒上記1と同様、業務上横領罪という刑法犯罪の対象となります。

3.後見人や親族等への贈与の禁止
⇒贈与は、被後見人本人の資産を減少させる行為なので、原則的にできません。
相続税対策に効果的な贈与であっても、相続税対策は、本人のためではなく、相続人のための行為なので、原則不可です。
例え本人が元気な時から毎年“暦年贈与”していた場合であっても、後見制度利用後も継続的に贈与したいという本人の明確な意思表示が書面で残っている場合等、特別なケースでなければ、通常は認められません。
ただし、毎年恒例だった孫への“お年玉”程度は、常識の範囲内の金額であれば、可能なケースもあるでしょう。

4.後見人・親族等への貸付の禁止
⇒被後見人本人にとって利益となるものではないので、原則できません。特に、無利息の貸付や回収の見込みの低い貸付は、贈与と同等にみなされるどころか背任罪という刑法犯罪に抵触する可能性もありますので注意が必要です。

5.介護施設・病院等への寄付・贈与の禁止

6.施設・病院の職員、介護ヘルパー等への謝礼・贈与の禁止

7.生計の同一・混同の回避
⇒被後見人と後見人の家計をできる限り分離して管理しなければなりません。特に、被後見人本人の資産から支出する場合には、後見人や親族への実質的贈与とならない様にきちんと管理する必要があります。

8.後見人・親族に対する扶養は要協議
⇒扶養義務に基づく金銭の支出は、場合によっては認められる可能性もありますので、事前に家庭裁判所又は後見監督人との協議が必要です。

9.親族の立替金に対する支払は要注意
⇒後見人以外の親族が何かの費用を立て替えて支払ったとして、その精算をする場合、その立替金が正当なものであるか精査する必要があります。場合によっては、扶養義務に基づく支出として、立替金の精算をしないことも必要です。

10.冠婚葬祭における祝儀・香典は要注意
⇒原則禁止という訳ではなく、常識の範囲内での支出は認められる場合があります。事前に家庭裁判所又は後見監督人へご相談する方がいいでしょう。

11.被後見人に債務を負わせることは要注意
⇒本当にその必要性があるか精査する必要性があります。相続税対策的な意味での借入等は、前述のように認めらません。

12.被後見人名義の不動産の利用は要注意
⇒ケースバイケースですので、事前に家庭裁判所又は後見監督人との協議が必要です。

13.個室や差額ベットの利用は要注意
⇒被後見人の諸事情によっては、やむを得ない場合もありますので、事前に家庭裁判所又は後見監督人と協議をした方が良いでしょう。

14.投資・投機行為の禁止
⇒後見人は、本人の資産を管理・保全する義務を負っているだけで、積極的に増やす必要はありません。したがって、元金保証のない投資・投機はできません。
後見制度利用前に本人がやっていた投資や投機は、後見人の判断で速やかに売却・換価処分することが望ましいです。

15.被後見人を契約者・被保険者、後見人・親族等を受取人とする生命保険契約の禁止
⇒被後見人の資産を消費して、後見人や親族のために生命保険契約をすることは、本人にとってメリットがありませんので、原則不可です。

16.ペイオフ対策の推奨
⇒預貯金口座は、なるべく一つに集約して管理すべきですが、本人の預貯金額が高額な場合、ペイオフ対策として敢えて複数の金融機関に分散して預けておくことも必要になります。

 

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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